米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、米下院のエド・ロイス外交委員長は27日、北朝鮮人権法を2022年まで延長する法案が上下両院を通過し、最終的な成立のためトランプ大統領の署名を待っている状態だと明らかにした。

「恥知らずな殺害」

2004年に時限立法として定められた北朝鮮人権法は、日本人拉致問題の解決を含めた北朝鮮の人権問題が改善しない限り、米国が北朝鮮に対して人道支援以外の援助を禁じるものだ。これまで2008年と2012年に延長され、昨年9月末に期間が満了。再延長の法案が議会に出されていた。

RFAによれば、ロイス氏は北朝鮮の金正恩政権が非核化を行うとしても、北朝鮮の政治犯収容所が引き続き運営されて「恥知らずな殺害行為」が続く限り、意味のある対北朝鮮投資はありえないだろうと述べたという。

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しかし、トランプ政権は対北朝鮮で、これとは違った姿勢を見せている。トランプ氏は米朝首脳会談の後、「(人権問題で)悪事を働いてきた国はほかにもある」と語り、北朝鮮の人権侵害を矮小化して見せた。ポンペオ国務長官も最近、対北朝鮮では非核化が最優先であり、人権問題はその後だと言明している。

さらにトランプ氏は、「北朝鮮は(経済的に)偉大な国になるだろう」などとして、非核化を条件に対北投資を後押しするようなポーズを見せている。

これはすべて、金正恩党委員長が核問題より、人権問題で米国の干渉を受けることを警戒していることから来ている。

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北朝鮮にとって、「完全な非核化」は簡単なことではないだろうが、不可能な課題でもない。金正恩党委員長は北朝鮮において、「全能」に近い独裁者だ。彼が決心すれば、たいていのことは実現できる。

しかし、人権問題は別だ。国民に対する人権侵害を止めるということは、恐怖政治を止めることと同義だ。そんなことをしたら独裁権力が弱まり、「全能」ではなくなってしまう。

だから金正恩氏は、トランプ政権が人権問題に干渉してこない限り、「完全な非核化」に向けた取り組みを続けるだろう。逆に言えば、トランプ氏が自分の机の上に置かれた北朝鮮人権法の延長法案にサインしたとき、金正恩氏は猛烈な反発を見せる可能性が高いということだ。米朝対話がとん挫することもあり得るだろう。

しかしトランプ氏は、昨年9月の国連総会演説で、北朝鮮を「邪悪な体制」と呼び、同11月の韓国国会での演説でも北朝鮮では約10万人が強制収容所に拘束され、拷問などの虐待を受けていると糾弾したのだ。今年2月にホワイトハウスに脱北者を招いた際には、北朝鮮女性の人身売買を自分が「止めさせる」とまで宣言した。

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それなのに北朝鮮人権法の延長に応じないとしたら、同氏は反対勢力からの強烈な批判にさらされることになる。次の大統領選に出馬する米民主党の候補は、トランプ外交を否定するため、まず間違いなく北朝鮮の人権侵害を問題にし、「私が勝ったら、トランプ氏のように民主主義を傷つける間違いは絶対に犯さない」と宣言するはずだ。こうした大義名分を否定する米国民が、どれだけいるだろうか。

つまり、トランプ氏が北朝鮮人権法の延長に同意しようとしまいと、いずれ米朝対話は、人権問題が理由で困難に直面することになるのだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

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1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記