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朝鮮労働党機関紙の労働新聞など北朝鮮メディアは、金正恩党委員長とトランプ米大統領の首脳会談を大きく報じており、北朝鮮国内での関心は非常に高いようだ。一連の報道に接した北朝鮮国民の間では、金正恩氏に対する評価が急上昇しているもようだ。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によれば、「祖父(金日成主席)が築いた財産を父(金正日総書記)が食いつぶしたので、3代目は指をくわえて見ているだけ」というのが金正恩氏に対する一般的な評価だったが、それが一変した。「元帥様(金正恩氏)は、人民の生活のために世紀の大英断をお下しになった」などの声が上がっているという。

この情報筋が言っているとおり、これまで北朝鮮国内での金正恩氏の人気はかんばしくなかった。

(参考記事:金正恩センスの制服「ダサ過ぎ、人間の価値下げる」と北朝鮮の高校生

もちろん皆、金正恩氏の残忍さは知っているし、恐怖心を抱いてもいる。何しろ金正恩氏は、スッポン養殖工場を視察した際には、管理不備に激怒し、支配人を銃殺。その際の自分の様子を収めた映像をテレビで流しているのだ。

(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導

また、「こっそり韓流ドラマを見た」というだけで、金正恩氏によって庶民がどのような目に遭わされているかも、口コミで知れ渡っている。

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それでもやはり、米朝首脳会談のインパクトは巨大だったようだ。

「党、軍、政府の幹部はもちろん、大学教授や大学生の間では13日の労働新聞に掲載された米国との会談と写真の話でもちきりだった。若い人たちは、すぐにでも統一するかもしれないという期待に胸を膨らませている」(情報筋)

情報筋は、首脳会談翌日の13日午前に平壌在住の親戚と電話で、首都と国境地域の住民の首脳会談への反応について情報交換をしたが、どちらの住民からも「豊かな暮らしができる条件が整って欲しい」という期待の声が上がったとのことだ。

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一方、報道された写真を見て分析する人も数多く現れた。「椅子の肘掛けにもたれかかり笑みを見せる元帥様とは異なり、トランプ大統領は両手を合わせているが、笑っていないのは満足していない証拠」との見方がほとんどだという。

「米国と比べて非常に小さい韓国も、国際社会で堂々と米国と肩を並べ会談している」として、会談が行われたことだけでも満足だという学生もいる。

若者の中では、会談場に掲げられた米朝両国の国旗を見て「北朝鮮国旗の方が鮮やかだ」と、プライドの高い北朝鮮の人らしいリアクションがある一方で、「憎悪の象徴だった米国国旗が、北朝鮮国旗と同じ色合いであることに驚いた」との反応を示す人もいたとのことだ。

(参考記事:金正恩氏が自分の“ヘンな写真”をせっせと公開するのはナゼなのか

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記