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米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)によれば、米国の「全米民主主義基金(NED)」が2018年・民主主義賞の受賞者として、4つの韓国のNGO――北朝鮮人権市民連合、ナウ(NAUH)、転換期正義ワーキンググループ(TJWG)、国民統一放送(UMG)を選定したと伝えた。いずれの団体も、北朝鮮の人権問題を活動内容としている。

このうち、韓国デイリーNKと同一グループの対北短波ラジオである国民統一放送は、独自に北朝鮮における人権侵害被害者の証言の掘り起こしを行い、その証言を北朝鮮に向け発信している。

その証言者のひとりが、脱北女性のコ・ジウンさんだ。

両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)の出身で、1990年代末、28歳のときに脱北したコさんは、中国で2度にわたり人身売買の被害に遭った。

北朝鮮女性の中国における人身売買被害については、本欄でも何度か取り上げた。この問題の責任の一端は、明らかに中国当局にある。中国当局は、北朝鮮に協力して脱北者を摘発、強制送還している。送還された脱北者を待っているのは、凄惨な暴力と性的虐待である。

(参考記事:刑務所の幹部に強姦され、中絶手術を受けさせられた北朝鮮女性の証言

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これを恐れるが余り、脱北者たちは中国でどのような不利益を被っても、声を上げることすらできない。

(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち

コさんも次のように語っている。

「脱北した女性たちは公園のようなところに連れて行かれ、一列に並ばされます。すると数人の男たちが寄ってきて『買い物』でもするように、好みの女性を選ぶのです。私たちにはどうすることもできません。従わなければ、中国にいることができないのですから」

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「このように証言するのは、あのような苦痛を強いられる人が、これ以上は出て欲しくないと思うからです。そして何より、中国当局が行っている強制送還の非人道性について注意を喚起したいと思いました。中国当局は脱北女性の人権を保護すべきであり、北朝鮮の人権侵害に加担するようなことを止めるべきです」

金正恩体制が、核・ミサイル開発に突っ走ることができたのは、北朝鮮に民主主義がないことと無関係ではない。北朝鮮の国民がよりよい生活にアクセスする可能性が広がり、彼らが声を上げるようになれば、金正恩氏の暴走にも自ずと歯止めがかかる。

国内外で人権侵害を受け続ける北朝鮮の人々を慮ることなく、北朝鮮の本当の意味での非核化は実現できないのだ。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記