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北朝鮮の国会に当たる最高人民会議第13期第6回会議が11日に行われ、いくつかの注目すべき人事が行われた。そのうちのひとつが、金正角(キム・ジョンガク)元人民武力部長の国務委員選出である。

韓国の情報機関・国家情報院は2月5日の国会情報委員会で、同氏が新たに、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の総政治局長に就任したと報告した。北朝鮮軍には、3人の最高幹部がいる。軍事行政の長たる人民武力相(以前は人民武力部長)と戦闘指揮の責任者である総参謀長、そして朝鮮労働党の指導を軍に伝える総政治局長だ。この中でも最も高位にあるのが、総政治局長なのだ。

つまり、金正角氏が金正恩政権内でどれだけ重要なポジションを占めているかは、北朝鮮における軍の政治的パワーをはかる目安となる。そういった見方から言うと、今回の人事は、北朝鮮軍の威信低下を物語っていると言えそうだ。

なぜなら、前の総政治局長である黄炳瑞(ファン・ビョンソ)氏は国務委員会の副委員長だったのに、金正角氏は一介の委員にとどまったからだ。

金正恩政権における軍の威信低下は、前々から言われていたことだ。金正恩氏は、核・ミサイル部門や特殊部隊など、軍内の一部エリート部隊のみを優遇し、一般の野戦部隊は放ったらかしにしてきた。

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食糧も満足に配給されない末端部隊では、窃盗などの犯罪や性的虐待が横行し、軍紀は乱れに乱れている。

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昨年11月には、板門店(パンムンジョム)で兵士が銃撃を受けながら軍事境界線を突破し、韓国に亡命するという、前代未聞の事件も起きている。

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そのような軍の現状が不満なのか、軍幹部に対する金正恩氏の態度は厳しく、粛清や処刑も相次いで行われた。

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かつて金正日総書記は、何事にも軍を最優先する「先軍政治」を基本に国のかじ取りを行ったが、後継者である金正恩氏が、そこからの大幅な転換をはかってきたのは明らかだ。

そもそも、すでに核武装を実現した北朝鮮が、百数十万人もの巨大な兵力を維持するのは合理的とは言えない。金正恩氏はどこかの段階で、通常兵力を縮小することを考えている可能性がある。

もっとも、北朝鮮軍のほとんどは建設工事や農業に動員されるだけで、ろくに戦闘訓練も行っていないとも言われる。最高幹部のポジションの低下も、このような軍の実態に合わせただけと言えるかもしれない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記