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昨年11月、韓国行きを目指して中国の瀋陽のアジトに潜んでいた脱北者10人が、中国公安当局に逮捕されたことは、デイリーNKジャパンでも既報のとおりだ。その中には、先に脱北して韓国で暮らしているイ・テウォンさんの妻ク・ジョンファさんと、4歳の息子も含まれていた。イさんは韓国メディアに出演して10人の救援を訴えた。

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しかし、世論が高まることのないまま、10人は北朝鮮に強制送還されてしまった。親子は、「この世の地獄」とも言われる収容施設に送られる可能性があった。

(参考記事:北朝鮮、脱北者拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も

一方、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、彼らを救うためのキャンペーンを繰り広げた。その甲斐あってか、クさんが釈放されたと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

イさんはRFAの取材に、釈放の知らせを聞いたときのことを次のように語った。

「3月3日に北朝鮮にいる友人から連絡が来ました。妻が釈放されたと。最初は到底信じられませんでした。保衛部(秘密警察)に逮捕されていた妻が釈放されるなんて…」

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クさんと息子は強制送還後、平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)の施設を経て、昨年12月3日に咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)の保衛部に勾留された。息子は、面倒を見る人がいないとの理由で20日後に帰宅させられたが、顔と手が凍傷にかかっていたという。

クさんはようやく釈放されたものの、栄養失調でガリガリになっていた。母方に預けられていた息子とようやく涙の再会を果たしたが、いたずらっ子だったのにすっかりおとなしくなっていたという。保衛部でよほどの経験をしたのだろう。イさんは、南北首脳会談がうまくいって北朝鮮が非核化され、国際社会に復帰することを望むと語った。

アムネスティはホームページを通じて、家族の話として、クさんが息子とともに政治犯収容所送りになるリスクはなくなったと明らかにした。3月に裁判を受ける予定だったが、どのような判決を受けたのか、そもそも裁判が開かれたのかを含めて明らかになっていない。

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母と息子は再会を果たしたが、韓国に住む夫のイさんとの再会はまだ先のことになりそうだ。

保衛部でひどい目に遭ったクさんは、韓国行きを考えられなくなっているようだ。その話を伝えた友人もイさんに「クさんを連れていくのは諦めろ」とアドバイスしたという。

また、同時に逮捕された8人の安否については詳らかにされていない。

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トランプ米大統領は2月、脱北者らをホワイトハウスに招いて北朝鮮の人権侵害の実態について聞き取り、とくに中国における北朝鮮女性の人身売買被害をなくさせてみせる、と発言した。そのためには、脱北者の強制送還を進めてきた中国に、方針を改めさせる必要がある。

(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち

しかし現在までのところ、そのために米国が、積極的に動いた形跡はない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記