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北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会政治局は22日、2月8日を朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の創立日とする決定書を発表した。

北朝鮮軍の創立日は、当初1948年2月8日だったが、1978年からは金日成主席が抗日遊撃隊を組織した日とされる1932年4月25日に変わった。今回の決定で、これが元に戻されたわけだ。

韓国軍当局は、北朝鮮が今年の軍創立70周年をアピールするため、2月8日に大規模な閲兵式(軍事パレード)を開催するものと分析している。聯合ニュースは韓国政府筋の話として、「平壌(郊外)の美林飛行場で約1万3000人の兵力と約200台の装備が動員され、閲兵式の予行練習を進める様子が識別される」と伝えた。閲兵式を準備する動きは先月末から捕捉されていたが、当初は兵力が約1万2000人、装備は約50台だったとされる。

もっとも、北朝鮮が軍事パレードをやるからと言って驚くほどのことではない。北朝鮮軍兵士のほとんどは腹ペコで軍紀も乱れ放題、通常兵器群は旧式で、最前線での亡命も相次いでいる。

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北朝鮮軍は、とても本格的な戦争などできる状態にはないのだ。

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そんな軍隊を見せびらかされたところで、どうということはない。ただ、問題はこの日が、韓国で平昌冬季五輪が開幕する前日に当たるということだ。

閲兵式は国内的な記念行事だが、れっきとした軍事的示威行為(デモンストレーション)でもある。仮想敵(北朝鮮にとっては米韓軍)の撃滅を想定した軍事演習とは性格が異なるものの、相手を威圧する目的があることは明らかだ。

国際社会の中には、非核化の問題を後回しにして北朝鮮を平昌五輪に参加させることについて、韓国に対して厳しい見方をする向きもある。それに耐えて「平和五輪」を実現しようとしている韓国としては、開幕前日の軍事パレードは面白くなかろう。

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さりとて、韓国が文句を言えば北朝鮮が「内政干渉するな」と言い返すのは目に見えている。話がこじれれば、「やっぱり五輪参加は止めとこうかな」などと言ってゆさぶりをかけるはずだ。

そして韓国にとって最悪なのは、北朝鮮が「われわれも閲兵式を中止するから、そちらも米韓合同軍事演習を中止せよ」と要求してくることだ。

米韓合同軍事演習に対する中止要求は、いずれかならず持ち上がるものであり、韓国政府も覚悟はしているはずだ。しかし、「平和五輪」の準備がここまで進んだ段階で持ち出されてはたまらないだろう。

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このような動きのひとつひとつを見るにつけ、現在の南北対話は完全に北朝鮮ペースで進んでいることを痛感させられる。

韓国政府に主導権を取り戻す余地はあるのだろうか。

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高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記