( 金正日の女性関係、数知れぬ犠牲者たち【上】から続く)
金正日は、高ヨンヒとの間に正哲(ジョンチョル)と正恩(ジョンウン)という名の2人の息子をもうけた。2004年5月ごろから、ある女性が「尊敬するお母様」として偶像化が始まり、肖像画が掲げられ、政治講演会の資料にも登場するようになったが、これは高ヨンヒと見て間違いないだろう。
また、北朝鮮国内では、後継者として正恩に注目が集まっているとの見方が有力だが、金正日は後継者について一切語っていない。
国家安全規格部(旧中央情報部)で北朝鮮調査団長を務めたソン・ボンソン氏によると、高ヨンヒは丸顔の美人で、金正日のタイプと言われていると述べた。
また、韓国の女優で、北朝鮮に拉致され、後に脱北に成功した崔銀姫(チェ・ウニ)氏も、1978年に金正日の自宅で開かれた誕生日パーティの場で、「家内」と紹介された女性(成恵琳と推定される)は、丸顔の美人だったと明かした。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面さらに、金正日の料理人だった藤本健二氏は、金正日は日本の女優の中では、吉永小百合が一番きれいだと言っていたと述べている。
金亨稷師範大学の学長で最高人民会議の代議員の洪一茜(ホン・イルチョン)が金正日の最初の妻とする説もあるが、それを証言した人の社会的地位、北朝鮮の高官の中でこのことを知っている人が誰もいないことを考えると、証言の信憑性は高くない。
また、金正日との関係が破綻した後にも、社会的地位を保つことは、北朝鮮体制の性質上、考えにくい。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面金正日はこの3人の女性以外にも、若い頃から多くの女性たちと関係を持ってきたという。
ソン・ボンソン氏は脱北者の証言と、外信報道を根拠として、ロシアに駐在していたソン・ソンピルの妹、ソン・ヒリム、女優で映画「花を売る乙女」のヒロインとなった洪英姫(ホン・ヨンヒ)、駐チュニジア大使の妻リ・サンジンなどを、金正日の愛人として挙げた。
さらには短期間ながら同棲生活を送った万寿台芸術団の舞踊家、巧芸組、俳優、官邸担当の看護婦、金正日の執務室のタイピストなども挙げられる。
外国の女性まで連れて来て、平壌で秘密パーティ
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面成蕙琳(ソン・ヘラン)の甥で、1982年に韓国に亡命し、金正日の私生活を暴露し謎の死を遂げた李韓永(イ・ハニョン、旧名李一男)は、著書「金正日ロイヤルファミリー」に次のように記している。
「なんとかして金正日を喜ばそうと考えた取り巻き連中は、北朝鮮女性だけのパーティでは足りないと思った。そこで、外国から女性を連れてきた。契約して来た者もいれば、拉致されてきた者もいた。彼女らはタイ、フィリピン、中東出身だった」
また、日本の「文藝春秋」は、1992年3月号で、1980年代にある日本女性が、タイ女性と共に北朝鮮に渡航し、金正日のパーティでお酌をした経験談を語った。
さらに、崔銀姫氏は手記「金正日の王国」で、北朝鮮で拉致されて外国人女性がパーティの場で「金正日のパーティに何度も駆り出されてばかりいる、もう国に返してもらえない」と泣きながら訴えたと記している。
金正日のプライバシーの暴露は収容所行き、敏感な事案は公開処刑
金正日の私生活は徹底して秘密に付されている。
金正日の私生活を立場にある親衛隊(警護部隊)と、幹部5課(側近、官邸勤務者)は、北朝鮮国民なら誰でも持っている公民証(身分証明書)を持たせてもらえない。豊かな暮らしと引き換えに、自由を奪われ、社会から完全に隔離されているのだ。金正日の秘密を漏らしでもすれば、収容所送り、さらには秘密裏に処刑されることすらある。
最高指導者の女性関係と指導力は関係がないと言う人もいる。また、指導者の女性関係をあげつらい、道徳的に問題視することは正しくないと指摘するひともいる。指導者の道徳性と統治力をここで語る必要はない。
ただ、最高指導者が権力を利用して、他人の妻を強制離婚させて略奪したり、関係が知られることを恐れて数多くの芸術家を収容所送りにしたりしたことは、非難されて当然だ。金正日の女性関係の犠牲者とも言えるのが、女優の禹仁姫(ウ・イニ)だ。
60〜70年代に北朝鮮の銀幕スターだった禹仁姫。映画監督のユ・ホソンと結婚し、3人の子どもを儲けたものの、在日朝鮮人の青年との不倫関係を結んでいた。ところがある日、2人は車の中で関係に及んだが、そのまま寝入ってしまったため、青年がガス中毒死してしまった。
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この事件をきっかけに、2人の関係が世間に知れわたり、禹仁姫を非難する声が高まった。当局から呼び出され取り調べを受けた彼女は、今まで関係を持った党、軍、撮影所の幹部数十人の名前を出した。そして、「金正日同志に会わせて欲しい」と懇願した。禹仁姫との関係が知られることを恐れた金正日は、銃殺を命じた。
「人民俳優禹仁姫は浮華放蕩罪を犯した、人民の名の下、銃殺刑に処す」
映画関係者が見守る中、最期の最期まで「指導者同志(金正日)に会わせてほしい」と口にしていたが、その願いが聞き入れられることはなく、刑場の露と消えた。
最高指導者である金正日は、自らの無限の権力で女性を弄び、秘密維持のために多くの人の命を奪った。李韓永の暗殺が、金正日の指示ということは、夫婦スパイのチェ・ジョンナム、カン・ヨンジョンの陳述で明らかになっている。
金正日は政治のみならず、女性関係でも権力を利用して、他人の家庭を破綻させ、多くの人びとを苦しめた。彼の女性関係について語ることは、単なるゴシップではないのだ。
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