「パーティー狂い」の噂

北朝鮮の首都・平壌で21日、朝鮮労働党の末端組織の幹部を集めた「第5回党細胞委員長大会」が開催された。同党機関紙の労働新聞と国営メディアの朝鮮中央通信は翌日、金正恩党委員長も参加した大会のもようを複数の写真とともに伝えたが、そのうちの何枚かに、ちょっとした「異変」が見て取れる。

正恩氏の実妹である金与正(キム・ヨジョン)氏が、最高幹部らと並び壇上の最前列に席を占めているのだ。

過去のこうした催しでは、与正氏が裏方として動いたり、客席に座ったりしている姿は見られたが、壇上に座っているのが確認されたのは今回が初めてである。

(参考記事:【写真】金与正氏の存在感が増している

与正氏は、2016年5月の党中央委員会第7期第1回総会(全体会議)で党中央委員となり、今年10月の同第2回総会では政治局委員候補に選任された。金与正氏の正確な年齢は不明だが、まだ20代後半から30代初めと見られる。さすがにロイヤルファミリーの一員でもあり、かなりのスピード出世だ。

ちなみに、与正氏は金正恩氏の左5人目の席に座っているが、2人の間にいるのは崔龍海(チェ・リョンヘ)、金平海(キム・ピョンヘ)、呉秀容(オ・スヨン)、朴泰成(パク・テソン)の各党副委員長である。まさに北朝鮮の最高幹部たちであり、正恩氏の妹に対する期待の大きさを物語っている。

気になるのは、与正氏が今後、どのような役割を担っていくかだ。一説に与正氏は、正恩氏の「動線」を点検する任務を与えられているとされる。米韓が北朝鮮指導部に対する「斬首作戦」の導入に動いている上に、正恩氏には一般人と同じトイレを使うこが出来ないという状況もある。そんな条件下で正恩氏の動きを取り仕切る事ができるのは、やはり信頼できる身内しかいないのかも知れない。

(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

また、正恩氏には「パーティ狂い」の噂もある。ある脱北者の情報によれば、与正氏は兄に対し、「お酒はほどほどになさい」と言って諫めることもあるという。たしかに、これまで数多くの幹部が些細なことで正恩氏の逆鱗に触れ、無慈悲に処刑されてきたことを考えれば、実の妹でもなければ恐ろしくて何も言えないだろう。

(参考記事:北朝鮮「秘密パーティーのコンパニオン」に動員される女学生たちの涙

だが、与正氏が今後、党中枢で権力の階段を登って行くのならば、果たすべき役割はこの程度のものでは済まない。

脱北者で平壌中枢の人事情報に精通する李潤傑(イ・ユンゴル)北朝鮮戦略情報センター代表によれば、金正日総書記の死後、北朝鮮の政務と人事を一手に握る党組織指導部長は、金正日氏の妹である金慶喜(キム・ギョンヒ)氏、次女であり正恩氏の異母姉である金雪松(キム・ソルソン)氏が歴任してきたという。

(参考記事:金正恩氏の「美貌の姉」の素顔…画像を世界初公開

ならば与正氏も、これから時間をかけて経験を積み、叔母や姉に匹敵する重要ポストを任される可能性もあると考えられる。

高英起(コウ・ヨンギ)

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1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記