飢えた北朝鮮の一家が「最後の晩餐」で究極の選択
韓国のNGO・転換期正義ワーキンググループ(TJWG)が28日に発表した報告書によれば、北朝鮮では2020年にコロナ・パンデミックを受けて国境を封鎖したのを境に、市民に対する処刑が急増したという。
北朝鮮は当時、世界で最も極端なコロナ対策を施行した。外国からの入国は、自国民を含め徹底的に禁じた。同時に違法に国境を越える脱北や密輸も禁じ、違反者を摘発すれば容赦なく処刑した。北朝鮮当局が、こうしたコロナ対策を住民統制の強化に利用したであろうことは、北朝鮮の人権状況を調査する世界各国のNGOが指摘しているところだ。そして、そうした調査の中でもうひとつ訴えられているのが、「コロナ禍では感染よりも、ロックダウンの方がよほど苦しかった」という北朝鮮の人々の声だ。
韓国デイリーNKは当時の様子について、ある両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)のある市民から証言を得ている。
現地では2020年8月と11月、封鎖令(ロックダウン)が下された。3週間にわたって外出や物資の移動が禁じられたが、食糧の備蓄などその準備をする時間がほとんど与えられず、飢餓を伴うステイホームを強いられた。
(参考記事:ここまで飢えが…北朝鮮「山奥の洞窟」で起きた衝撃事件)
封鎖令は、農民にも影響を及ぼした。いつまた封鎖令が下されるかわからないとの不安から、収穫した野菜を市場に出荷せず、自宅に備蓄する現象が見られた。これが、以前から表れていた物価高騰をさらに煽る結果を招いた。封鎖期間中に警備に動員された兵士があちこちで暴行や窃盗を働き、市民をさらに苦しめた。
「生活が苦しく、家を売りに出す人も増えた。恵山洞(ヘサンドン)に住んでいた一家は、家を売り払ったカネで食べ物を買い、最後の晩餐をしてから、殺鼠剤(ネズミ捕りの薬)を飲んで一家心中した」(前出の市民)
こうした状況は恵山だけでなく、各地で見られた。北朝鮮の極端なコロナ対策は、自国の医療・保健体制が脆弱であることを認識し、体制崩壊の危機を予感したからだろう。だから外国や国際機関に支援を求めようともせず、封鎖を優先した、国民の生命よりも、体制の安定を優先したのである。
