北朝鮮が核戦力の増強を「人民の生命と安全の確保」という名目で正当化し、核抑止力に依拠した国防強化路線を一層鮮明に打ち出している。最近の中東情勢、とりわけイラン指導部を標的とした軍事行動の余波が、体制安全への危機認識を強めた結果との見方が出ている。

朝鮮労働党機関紙・労働新聞は21日付の論説「党政策の生命は絶対的な人民性にある」で、「党の政策は人民の尊厳と生命の安全を全面的に担い、断固として守り抜くことを第一の使命とする」と強調し、核戦力強化の正当性を前面に押し出した。

同紙は「人間にとって幸福で安定した生活への要求ほど強烈なものはない」とし、「人民の尊厳と生命安全は一寸たりとも侵害されてはならない最重大事だ」と主張。その上で、「敵対勢力の威嚇と圧力の中でも核戦力強化政策を断固として実行してきたのは、強力な軍事力によって人民の自主的生活を担保するためだ」と訴えた。

こうしたメッセージが単なる国内結束の強化にとどまらず、最近の国際情勢と密接に連動していると見るのが妥当だろう。特に、米国やイスラエルがイラン最高指導部を狙ったいわゆる「斬首作戦」に踏み切ったとされる状況は、北朝鮮指導部に直接的な脅威シグナルとして受け止められた可能性が高い。

韓国の安全保障専門家は「イランの事例は『核を持たない国家の指導部はいつでも排除され得る』という認識を強めたはずだ」と指摘。「金正恩政権にとって核は体制生存の絶対的手段であるとの位置付けが、さらに強化される契機になった」との見方を示す。

論説は「現世界は暴力と専横が横行する環境だ」として国際秩序を厳しく批判。外部からの軍事介入の可能性を既定路線と捉え、それに対抗する唯一の手段として核戦力の必要性を強調する意図がうかがえる。

また同紙は「国防工業と革命的武装力が党の神聖な名と結び付けられて呼ばれる例はない」とし、軍事力と党の正統性を事実上一体化。党の決定書も「人民の運命を最後まで担う確固たる立場」を示したものだと強調した。

北朝鮮は核戦力を単なる軍事手段ではなく、「人民保護」と「体制維持」を同時に担保する中核要素として再定義した形だ。中東発の安全保障環境の変化が朝鮮半島にも波及する中、同国の「核依存」は今後さらに強まる可能性がある。