北朝鮮の一部農村地域で、食糧難の深刻化が伝えられている。

例年であれば「春窮期」と呼ばれる食糧難は4月から5月にかけて本格化するが、デイリーNKの内部消息筋によると、今年はすでに2月の段階で穀物が尽きる世帯が目立ち始めたという。消息筋は「時期が年々早まっており、現在はさらに状況が悪化している」と危機感を示した。

苦しいのは軍隊も同じだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は以前、清津(チョンジン)市郊外に駐屯する高射銃部隊で兵役についていた21歳の女性兵士の非業の死について伝えた。

黄海北道(ファンヘブクト)の農村出身のこの兵士は、部隊に配属された当初から副業小隊で勤務し続けてきた。この「副業」とは、部隊で消費する食糧を生産することを指す。朝鮮人民軍は慢性的な食糧不足に悩まされており、それを解消するために副業地と呼ばれる農地を所有、兵士たちに食べさせる農作物を生産している。

彼女は、トウモロコシ畑で農作業中に、周囲を徘徊していた野犬に噛まれてしまった。周囲には人が大勢いたが、傷口が小さかったことから、本人を含めて誰も大したこととは考えなかったようだ。当時は農繁期で忙しかったこともあり、結局病院には行かなかった。ところが、数日後に亡くなってしまった。実はこの犬、狂犬病に感染していたのだ。

(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

副業小隊は慢性的な飢えに苦しむ兵士たちの「生命線」であり、農繁期に作業を休むのは難しい。そうした事情が、彼女の死を引き寄せてしまったのかもしれない。

狂犬病は、発病すれば治療方法のない恐ろしい病気だ。発病を防ぐ唯一の方法は、複数回に渡って狂犬病ワクチン接種を受けることだ。日本では国内での感染は長年起きていないが、北朝鮮と軍事境界線を挟んで向き合う韓国では、度々発生している。その多くが、軍事境界線を超えてやってきた野生動物を媒介にしたものと言われている。