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北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)大紅湍(テホンダン)で先月、性暴力被害に遭った女性が自ら命を絶とうとする事件が起きた。幸いにして一命は取り留めたが、社会的に波紋が広がっている。デイリーNKの内部情報筋が伝えた。

この大紅湍はジャガイモの名産地として有名だ。だが、それ以外には何もなく、まさに「陸の孤島」だ。住民は出口の見えない貧困に苦しめられており、唯一の望みが国境の向こうの中国だ。

豆満江の対岸に点在する、中国の農村との間で小規模な密輸が行われ、それで糊口をしのいでいた人もいたが、コロナ禍で国境警備が強化された。Aさんはそんな中で摘発され、教化所(刑務所)に収監されていたが、そこは地獄そのものだった。

Aさんは先月21日、自宅で自ら命を絶とうとした。だが、すぐに発見され病院に搬送された。現在は隔離病室で治療を受けており、幸いにして命には別状がないとのことだ。

彼女の自宅には30ページにも及ぶ長文の遺書が残されていた。そこには、教化所での地獄の数年間が綴られていた。以下、一部を抜粋する。

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「教化所への入所から出所直前まで、少しでも若くてきれいな女性は保安課長と保安課指導員に毎回呼び出され、性奴隷にされていた」

遺書には、加害者の実名、職責、そして具体的にどのような性加害行為を行ったのかについて詳細に記されていた。それだけではなく、他の女性受刑者が看守の性暴力加害について暴露したが、教化所側は上部に事実を捻じ曲げて報告し、この女性を独房に閉じ込めたという話など、告発を封じ込めようとする動きについても綴られていた。

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「彼女は服役中、自分だけではなく複数の女性受刑者が、性奴隷扱いされたと(遺書で)暴露したが、地域の閉鎖性も手伝って、教化所の中にいるときには告発する方法がなく、出所の日を指折り数えていた」(情報筋)

そして、ついにその日がやって来た。出所した彼女は、友人たちに教化所で遭った性暴力被害について打ち明けた。しかし、返ってきたのは「残念だけど、あなたが我慢するしかない」「どうしようもない」という答えだった。

「性暴力被害は女性の落ち度」とする北朝鮮の風潮を考えると、むしろAさんに問題があったかのような噂が広がることを、友人たちは心配したのだろう。だが、それに絶望したAさんは、自分の命と引き換えに、告発を行おうとしたのだ。

(参考記事:社会の認識不足で死に追いやられた北朝鮮の「未婚の母」

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この話は地域社会に広がり、衝撃を持って受け止められた。経緯は不明だが、世論はAさんの味方に付いたのだ。そして、教化所を管理する社会安全省(警察庁)に対する批判が高まった。

これに狼狽えた社会安全省教化局保安課は、被害者が多数いるものと見て、人員を緊急に派遣して調査に取り掛かった。社会安全省は現在、教化所の保安課と教化課に命じて、この女性が収監されていた区域を受け持つ男性の看守全員に対する調査を行わせている。

なお、遺書で実名が挙げられた加害者は、既に全員が別の教化所に異動となった。これに対して、教化所側が事件をもみ消そうと、慌てて異動させたのではないかという批判が起きている。

この話を伝えた情報筋も、事件の解決には懐疑的だ。

「教化所は社会と隔離された場所で、どんなことが起こっているのかは外からでは中々わからない。社会安全省も事件をもみ消そうするだろうし、加害者も処罰されるかどうかは不透明だ」

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