先月、キューバに駐在していた北朝鮮大使館の参事官が韓国に亡命していたことが明らかになった。
北朝鮮外交官の韓国亡命が明らかになるのは5年ぶりだが、キューバは北朝鮮にとって最も重要な友好国だ。当然、そこに駐在する外交官もエリート揃いであるはずだが、そんな「核心階層」にまで動揺が走っているということだ。
それもそのはずである。たとえ重要な友好国を担当するエリート外交官といえども、その運命は「一寸先は闇」なのだから。
韓国紙・朝鮮日報系のケーブル局であるTV朝鮮の先月の報道によれば、中国を担当していた北朝鮮外務省の幹部が、非公開で処刑されていたという。
(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面その幹部とは、核問題を巡る米朝中韓日露の6カ国協議にも参加したキム・ソンギ氏だ。中国への留学経験のあるエリートで、2007年の6カ国協議では北朝鮮の金桂寛(キム・ゲガン)首席代表を補佐した。2010年には次官に昇進し、中国を担当していた。
ところが、2012年を最後に公式の場から姿を消していた。
TV朝鮮は事情通の話として「当時、中国留学の同窓生に6カ国協議と関連した情報を流布したことや、個人の不正容疑で逮捕された。間もなく銃殺されたが、(当局は)中国との関係を意識して非公開で処理した」と伝えている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面だが、「同窓への情報流布」や「不正容疑」といった理由を、額面通りに受け取ることはできない。まず不正蓄財は、それ自体は北朝鮮の官僚ならば誰もがやっていることだ。もちろん、その額が大きければ重罪になるが、それよりもポイントは「なぜバレたのか」という点にある。
また、「情報流布」というのはスパイ容疑のことだが、これもあとからこじつけ易い罪名だ。
つまりキム・ソンギ氏は、何らかの政治闘争の結果として抹殺されたか、あるいは金正恩氏の逆鱗に触れた可能性があるということだ。そして2012年という時期は、執権初期にあった金正恩氏のメンタルが、非常に不安定に見えた時期でもあるのだ。