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北朝鮮の漁船が漁に出るには、出港許可証や出漁許可証などの書類が必要になる。当局は、コロナが海を通じて国内に流入するかもしれないとして、一時はこれらの許可証を一切出していなかったが、段階的に緩和され、再び出漁が可能になった。

しかし、許可証発行の手続きが非常に面倒になり、またもや漁に出られない事態になっている。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:コロナ禁漁に縛られていた北朝鮮漁船、制限緩和で再び日本海へ

許可証を得るには、操業を行う海域を担当する軍の旅団、大隊とその哨所(監視塔)からそれぞれ認証を取り付ける。次いで、地域所轄の保衛部とその上の市や郡の保衛部の認証を取り付けた上で、さらには市や郡の安全部(警察署)、分駐所(交番)の認証が必要だ。少なくとも8つの機関のハンコが必要になる。

そのたびにワイロを渡すのだが、1回では済まず2回になることもなり、それでもダメなら幹部とのコネを使って話をつけてもらうしかない。この手続きを半年に1回しなければならず、今年上半期の許可証は7月末までなので、8月以降も漁に出るなら、またこの面倒極まりない作業を繰り返さなければならないのだ。

それだけではない。乗組員にも制限が設けられた。かつては船長が乗組員を選んでいたが、今では朝鮮労働党員でなければならず、過去に密輸などの犯罪に加担した経歴があってはならないことになった。ここまでになれば、事実上の操業禁止と言っても過言ではないだろう。同時に、さらなるワイロが必要となったことを意味する。

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手続きを複雑にする目的のひとつは、脱北防止だ。先月、黄海北道(ファンヘブクト)の康翎(カンリョン)から2家族9人が脱北したが、木造船に乗ってのものだった。

(参考記事:「木造船脱北」成功を北朝鮮国民が祝福…「自分のことのように嬉しい」

あともうひとつは密輸防止だ。沖合での瀬取りと言えば、制裁で輸出入が禁じられたものの取り引きもあるが、一般的には食料品や生活必需品、資材などの取り引きで、中国船から北朝鮮船に積み替えられ、密輸される。

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漁民にとって、密輸は漁と合わせて貴重な収入源だった。ところが出漁手続きが面倒になり、多額のワイロが必要なことから、かなりの儲けがなければ割に合わない。多くの漁民が漁に出るのを諦めている。

「国は密輸をさせまいと許可証の発行を難しくしたが、漁民にとっては海に出ることすら難しく、どう生きていけばいいのかお先真っ暗だ」(情報筋)