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緯度の高さの割には、海流の影響で相対的に温暖な北朝鮮の東海岸。その北端に位置する咸鏡北道(ハムギョンブクト)では、先月中旬から小麦や大麦の種まきが始まった。ところが、計画通りに進んでいないという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋は、先月中旬から定平(チョンピョン)郡内の各共同農場で、小麦や大麦の種まきが始まったが、1週間以上経っても終えられていないところが多いと伝えた。

この地方で麦の種まきは2月の中旬から下旬に行うのが適切だが、なぜ遅れているのか。それは、種まきに必要な畑の耕しができずにいるからだ。

郡内の旧倉里(クチャンリ)協同農場では、各作業班が10ヘクタールの畑を請け負い、麦の種まきを行うことになっている。しかし、ディーゼル油の不足でトラクターが使えず、食糧難でまともに餌を与えられていない牛を使って耕しているため、先月末の時点で種まきが半分しかできていない。

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当局は、種まきは適時に行ってこそ収穫を増やせると急がせているが、その一方でディーゼル油の調達は農場に丸投げ。資金難に苦しむ農場は、高いディーゼル油に手が出せずにいる。

平安南道(ピョンアンナムド)の別の情報筋は、当局が各農場に対して、チュチェ(主体)農法に従って、種や有機質肥料を自主的に確保し、大麦と小麦の種を今月初旬までに終えられるよう指示を下したと伝えた。

殷山(ウンサン)郡内の各共同農場では、先月中旬から畑を耕し始めたが、ここでもやはりディーゼル油の不足でトラクターが一部しか使えず、先月末の時点で半分以下しかできていない。

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種まきは遅くとも今月初旬に終えてこそ、6月に収穫が多くの収穫が見込める。しかし、当局が燃料や肥料を供給せず、その調達を農場に押し付けているため、遅れるしかない。

ちなみに郡内の市場でのディーゼル油1キロ(1.17リットル)の価格は、中国から輸入された高級品が1万5000北朝鮮ウォン(約240円)、国内で精製された一般のものが1万2000北朝鮮ウォン(約192円)、一般の商人が精製した質の悪い「加工ディーゼル油」が8000北朝鮮ウォン(約128円)だ。輸入ディーゼル油は昨年と比べて25%値上がりしている。

金正恩総書記は、先月末に行われた朝鮮労働党中央委員会第8期第7回総会拡大会議で、農業の重要性を力説、異常気象に備えた灌漑システムの完備、農業の機械化の推進、耕地面積の増加などを訴えた。

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しかし、農業の現場では燃料もなければ肥料もない。稲の苗を霜から守るためのビニール膜が、故金正日総書記の生誕を記念するお菓子セットのパッケージに流用され、農業現場で不足する始末だ。

(参考記事:食糧不足でも金正恩の「お菓子セット」が重要視される北朝鮮

そんな状況で機械化を進めても、使えない鉄の塊が増えるだけ。また、大規模干拓で耕地面積を増やすとなれば、多くの国民が現場に動員され、疲弊し、経済活動がストップする。完成すればプロパガンダのネタとなるため、燃料や肥料が優先的に供給されるだろうが、そうなれば、他の農場への供給がさらに滞ることとなる。

派手な構想を打ち出す前に、今存在する農場に適切な資材の供給を行い、農民のやる気を引き出すインセンティブ制度の圃田担当制を拡大するなど、優先すべきことはいくらでもあるのに、そうはならないのが北朝鮮だ。

(参考記事:毎年凶作の北朝鮮農業、何が問題なのか?