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日本でも一般化した韓国風の冷麺。その元祖が現在の北朝鮮の首都・平壌であることはあまり知られていないかもしれない。記録によると、17世紀の後半から平壌周辺で食べられていたという冷麺。名店として知られているのは平壌市内にある「玉流館(オンリュグァン)」だ。

故金日成主席の指示に基づき建設され、1960年8月13日にオープンしたこの店、本館と別館を合わせて2200席もの規模を誇るが、それでも店の前には客の行列ができている。

(参考記事:「民族料理を代表する名料理」北朝鮮メディア、平壌冷麺を絶賛

ここを利用するには、勤め先の職場や人民班(町内会)を通じて割り当てられた「飲食予備票」という一種の食券を持参しなければならない。飲食代は別に取られるが、極めて安価になっている。ただ、そういう客に提供される席の数は限られており、多くが外貨を利用する特権層や外国人観光客用の席となっている。そのため、一般庶民は長時間待つことを強いられるのだ。

(参考記事:高級レストランを貸し切りにする北朝鮮のリッチな大学生

そんな玉流館がメニューの価格を大幅値上げしたと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

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今年6月ごろから、飲食予備票の割り当てが消えて入手が困難になっていたが、同時にかつては1杯300北朝鮮ウォン(約7円)だったが冷麺が、7000北朝鮮ウォン(約160円)と20倍以上の大幅値上げとなった。従来は、国定価格と市場での物価を反映した市場価格の両方で提供していたのだが、国定価格を廃し、市場価格に統一したのだ。ちなみに外国人が利用する場合は、冷麺1人前が25元(約426円)とのことだ。

北朝鮮の一般的な労働者の月給は3000北朝鮮ウォン(約70円)で、市場ではコメ1キロすら買えない超薄給だ。ただ、以前は食糧や生活必需品を無料またはただ当然の価格で配給してもらえたために、現金収入は要らなかったのだ。

つまり、冷麺1杯300北朝鮮ウォンなら、たまの贅沢として楽しめたのだが、もはやそれも不可能になったということだ。

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ちなみに、韓国の北朝鮮研究学会と現代リサーチ研究所が昨年、脱北者を対象に行なった調査によると、上記のような形で収入を得ている国営経済従事者はわずか24%に過ぎないという結果が出た。ただし、平壌だけは例外で、国営経済従事者の割合が高いと言われている。

地方の人や、同じ平壌でも商売に携わっている人にとって、7000北朝鮮ウォンは決して不当に高い金額ではないのだが、国営経済従事者の多い平壌では「極端に高い」と受け止められてしまうのだ。

(参考記事:北朝鮮国民の半数が「商売」で収入を得ている

別の情報筋によると、大幅値上げに加え、食材不足のため営業時間が昼12時、午後6時からそれぞれ2時間ずつに短縮され、客は大幅減。市民からは「首都市民のための奉仕基地としての機能を放棄した」などと批判が噴出しているとのことだ。

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最高指導者が訪れた超有名店ですら、国定価格での提供を取りやめ、営業時間を短縮するほど、コロナ鎖国による経済状態が極度に悪化しているということだろう。ちなみに、玉流館以外にも、清流館、高麗ホテル、大聖百貨店のレストランも、最近になって一斉に大幅値上げに踏み切ったとのことだ。

「元帥様(金正恩総書記)は今年に入って様々な大会で『人民第一主義』を繰り返し強調しているが、市民の暮らしは人民生活向上とは逆の方向に向かっている」(平壌市民)