「見るだけで気分が悪くなる」金正恩氏の命令、執行進まず

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北朝鮮の金剛山観光地区には、韓国の現代グループが巨額の投資を行い完成させたホテルなどがある。韓国から直接訪れる形の観光が行われていたが、2008年に韓国人観光客が朝鮮人民軍(北朝鮮軍)兵士に射殺される事件が起きたのをきっかけに、中止されている。

それから11年。一昨年の10月に現地を訪れた金正恩総書記は「見るだけでも気分が悪くなる」と、韓国側が建設した施設の撤去と、新たな開発を指示した。しかし、今に至るまで開発はおろか、施設の撤去すらできていないと、デイリーNKの内部情報筋が明らかにしている。

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情報筋は「元帥様(金正恩氏)と党の思想は、コロナ長期化に備えることを優先している」として、施設撤去が行われていない理由を説明した。また、建設を行ったとしても、コロナ鎖国下で外国人観光客の受け入れができないことから、観光業の活性化が困難であることも理由に挙げた。

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金正恩氏は、今年1月の朝鮮労働党第8回大会で行った党中央委員会第7期活動報告で、金剛山を含めた観光業についてこのように言及している。

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金剛山地区を朝鮮式の近代的な文化観光地に変えなければならない。

高城港の埠頭にある海金剛ホテルをはじめとする施設を全部取り払い、金剛山の美しい自然景観によくマッチしながらも朝鮮人民の情緒と美感に合う典型的な朝鮮式建築形式の建物を建設するという課題が提示された。

金剛山観光地区総開発計画に従って、高城港海岸観光地区と毘盧峰登山観光地区、海金剛海岸公園地区とスポーツ文化地区を特色があるように整備する事業を新たな5カ年計画の期間に年次別、段階別に行わなければならない。

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だが、コロナ対策や、それが原因となった経済難、食糧難への対処が優先され、観光業はプライオリティが下げられたということだ。報告で言及されている高城(コソン)港海岸観光地区、毘盧峰(ヒロボン)登山観光地区、海金剛(ヘグムガン)海岸公園地区のいずれも工事が中断し、建設に当たる兵士は全員撤収したと情報筋は伝えた。

ただ、情報筋は「海金剛ホテルが撤去され新しい建物が立てられることは明らかだろう」とし、撤去と建設はあくまでも一時的な中断であり、コロナが収まれば工事が再開するとの見通しを示した。

また、「南朝鮮(韓国)と連携する試みは絶対にないだろう」として、金正日総書記が進めた従来の方式を否定し、中国との合弁で資金を調達、資材、設備を取り寄せ、北朝鮮側が建物の設計と建設を行う形で進められる可能性が高いと述べた。