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北朝鮮の金正恩総書記は先月29日の朝鮮労働党中央委員会第8期第2回政治局拡大会議で、新型コロナウイルスの流入防止のための防疫対策において、幹部の怠慢により「国家と人民の安全に大きな危機を醸成する重大事件を生じさせた」と明らかにした。北朝鮮メディアは重大事件の内容に触れていないが、軍が国家の防疫ルールに違反し、大量のコメを外部から搬入したことを指している可能性が浮上した。

金正恩氏は、国民の食糧難を解消するため軍糧米を配給するよう特別命令を発したが、物資の横流しが横行する軍には十分な備蓄米がなく、コメを独自に調達する過程で問題が生じたもようだ。

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北朝鮮内部の情報筋が1日、韓国デイリーNKに伝えたところによると、軍は最近、傘下の貿易会社などを動員し、中朝国境や西海岸の南浦(ナムポ)港を通じて大量のコメを搬入。この動きに疑念を抱いた南浦検疫所が上層部に報告したことで、問題が発覚したという。

北朝鮮は昨年1月29日、新型コロナウイルスの流入を防止するため国境を全面的に封鎖し、貿易を停止した。現在は公式な貿易統計に記録されない形で、国家が必要と判断した物資のみが搬入されているが、そうした物資も消毒と一定の隔離期間を経た上で移動が許可されるなど、厳重な管理がなされている。

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軍は、こうした手続きに必要な国家の承認を受けず、特に咸鏡北道(ハムギョンブクト)など一部国境地域では、中国から持ち込んだコメを、隔離期間を経ないまま国民に供給したという。

拡大会議では、「重大事件」の責任を問われ、複数の最高幹部が更迭されている。更迭された最高幹部の名前は明らかにされていないが、北朝鮮メディアが伝えた拡大会議の様相から、党政治局常務委員と党書記、党中央軍事委副委員長などを兼務する李炳哲(リ・ビョンチョル)元帥、そして朴正天(パク・チョンチョン)軍総参謀長(元帥)らである可能性が高いと見られている。

情報筋は「李炳哲は独断で、外部からコメを持ち込むことを承認し、更迭されたと言われている。また今後、より多くの軍幹部が問責されたり、党的・法的な処罰を受けると見られる」と語った。

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情報筋によれば、軍がこうした行動に走った背景には、金正恩氏が6月の党中央委員会第8期第3回総会で署名・発令した特別命令書があった。北朝鮮メディアは特別命令書の内容は明らかにしていないが、デイリーNKの内部情報筋をはじめ複数の消息筋によれば、食糧難にあえぐ国民に軍糧米を配給するよう命じるものだったとされている。

金正恩氏が、軍糧米の備蓄量を把握せずにこうした命令を出すとは考えにくく、同氏に報告された数量と実際の備蓄量の間に、相当な乖離があったものと思われる。軍がそうした実態を報告せず、不足分を独自に調達しようとしたのは、以前から横行する物資の横流しを隠ぺいするためだった可能性もある。

今後、党などによる調査と責任追及が軍上層部の腐敗にも及ぶなら、軍指導部で「血の粛清」の嵐が吹き荒れる可能性も小さくない。