北朝鮮は先月24日、「悪性ウイルスに感染されたと疑われる越南逃走者(元脱北者)が3年ぶりに不法に分界線を越えて去る7月19日、帰郷する非常事件が発生した」として、開城市を完全封鎖する措置を取った。
(参考記事:「開城市で悪性ウイルス感染者」新型コロナ、北朝鮮で初)実際に、この元脱北者が新型コロナウイルスに感染していたかどうかは不明だが、当局は国家非常防疫システムを最大非常体制に移行し、開城の完全封鎖にとどまらず、全国的な移動統制に乗り出した。
平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、今月末まで他地域への移動が制限されるとの指示が工場、企業所に下されたと伝えた。
元々移動の自由が制限されている北朝鮮では、居住する市や郡から出る場合には、安全部(警察署)が発行する旅行証(国内用パスポート)が必要だが、現在は発行が大幅に減らされている。
政治的な行事も影響を受けている。革命の聖地である白頭山への「踏査」(タプサ)に行こうとしていた平安南道の大学生が、大学当局から出発を保留するように指示を受けたという。踏査とは、金日成主席の抗日パルチザン活動の足跡をめぐる聖地巡礼を指すが、そんな政治的に重要な行事ですらストップする状況になっているのだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面各機関、工場、企業所では国が製造したという消毒薬での消毒を行い、外出時のマスク着用も義務化された。消毒用ジェルを持ち歩く人も増えたとのことだ。
中央の高級幹部が移動する際にも、徹底的な消毒や検査を求められる状態となっており、地方の幹部や一般人の移動は事実上禁止されている状態と言えよう。出張で他地域に行った企業所の資材調達担当者、指導員も、戻って来れなくなっている。
開城から首都・平壌に出張中の人々は、さらにひどい扱いを受けている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面平壌市のある幹部は米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に、平壌も先月27日から完全封鎖に次ぐレベルの準封鎖令が下されると同時に、平壌に出張に来た20人の開城市民が防疫当局により強制隔離されたと述べた。その理由は「単に開城から来たから」(幹部)というだけだ。この幹部は、当局が元脱北者により感染が広がったかのように宣伝するために、20人を新型コロナウイルス感染疑いにしていると見ている。
別の平壌市民によると、当局は20人に対して1日1回検温するだけで、他の措置は一切行わず、どこかに閉じ込めていると述べた。食料品や医薬品の提供は行わず、「検疫事業を防疫学的要求に合わせて厳しく行え」と繰り返すばかりだという。
(参考記事:コロナ封鎖の北朝鮮・開城で食糧配給…当局、市民の不満に緊張)この市民は、北朝鮮国内で実際に新型コロナウイルスに感染したと発表された事例はないとし、当局は韓国に対する反感を植え付けるプロパガンダのために元脱北者や、開城の感染状況を大げさに語っていると述べた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面(参考記事:【写真】水着美女の「悩殺写真」も…金正恩氏を悩ませた対北ビラの効き目)
移動統制は、開城や隣接する黄海道(ファンヘド)のみならず、遠く離れた咸鏡北道(ハムギョンブクト)や両江道(リャンガンド)でも強化されていることから、全国的に行われているものと思われる。