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かつては違法とされながら、その後に公認され、北朝鮮経済を底辺から支えるようになった市場の数は、今や全国で400ヶ所を超える。

米国の戦略国際問題研究所(CSIS)は昨年発表した北朝鮮の市場の実態分析報告書で、北朝鮮当局は年間5600万ドル(約60億5500万円)以上の収入を市場から得ていると明らかにした。北朝鮮有数の卸売市場、清津(チョンジン)の水南(スナム)市場だけでもその額は年間84万ドル(約9082万円)に達する。

当局がいかにして市場から収入を得るのか。それは、「市場管理費」、通称「チャンセ」(ショバ代)だ。

北朝鮮は世界で唯一「税金制度のない国である」ことを誇っている。故金日成主席の提唱に応じて、1974年4月1日から税金制度が廃止された。地方政府は、中央政府からの予算配分で運営に必要な資金が得られていた。ところが、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」を境にして、その資金が途絶えてしまったのだ。そのため、市民から使用料、募金などの名目で、法的根拠のないカネが税金と同様に、頻繁に徴収されるのだ。その一つが市場管理費というわけだ。

その市場だが、国際社会の制裁で深刻な不況に襲われ、国民の現金収入が減ったことで物が売れず、商人の数が激減していると伝えられている。

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(参考記事:北朝鮮の市場に異変「商人の数が激減している」

そんな中、中国との国境に接する両江道(リャンガンド)の普天(ポチョン)、金正淑(キムジョンスク)、金亨稷(キムヒョンジク)の各郡で市場管理費が引き下げられたと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。これは事実上の「税金の減免措置」と言っていいだろう。

普天と金正淑では工業製品の販売する商人は1日1000北朝鮮ウォン(約13円)、食料品やアイスクリームを販売する商人は1日500北朝鮮ウォン(約6.5円)の市場管理費を支払ってきたが、最近になって半額に引き下げられた。

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この措置は商人から好評のようだ。

「商売がうまく行かないので負担が大きかった」
「このような状況(制裁不況)を考慮したのかはわからないが、各郡で市場管理費を下げたことは商人にとって幸い」
「少なくとも損はしなくなりよかった」

ちなみにこの地域の市場管理費は、他の地域に比べてかなり安く設定されている。都市や店舗の規模、商品の種類によって異なるが、電化製品や肉類を扱う店は1日1500〜2000北朝鮮ウォン(約20〜26円)、衣料品店は1000〜1500北朝鮮ウォン、食料品は500〜1000北朝鮮ウォンが相場だ。

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商人たちは喜んでいるが、市場管理費を徴収する市場管理所の職員にとっては災難だろう。彼らは、市場管理費に加え、自転車保管料をネコババすることで月数百ドルの収入が得られる。また、商売のノウハウまで学べる仕事として大変人気で、コネとワイロなしでは入れないと言われてきたが、市場管理費の引き下げは収入のダウンに直結する。

(参考記事:北朝鮮、市場管理人という利権…着服し放題の「おいしい仕事」