北朝鮮の国境警備兵が赤裸々に告発「犯罪天国」の実態

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普通の国では、国民がお上から何らかの不利益を被った場合、裁判所、人権擁護機関などに訴え出て、救済を求める。しかし、北朝鮮ではそれらは存在しないか、まともに機能していない。北朝鮮国民が頼れるのはコネ、カネ、あるいは「信訴」だけだ。

「信訴」というのは、中国の「信訪」と同様に、理不尽な目に遭った国民が、そのことを政府機関に直訴するシステムで、一種の「目安箱」のようなものだ。元々は法制度の外で運用されていたものが、1998年に制定された信訴請願法で、法的根拠が与えられた。

密輸に加担した容疑で摘発され、実刑判決を受けた北朝鮮の国境警備隊の兵士がこの「信訴」を使って密輸や人身売買など部隊の不正行為を暴露し、大騒ぎとなっていると、デイリーNKの内部情報筋が伝えてきた。

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6ヶ月の刑を終えて朝鮮人民軍606号教化所(刑務所)から出所したばかりのこの兵士は、同じ中隊の軍官(将校)と上級者の不正行為を告発する信訴の手紙を上部に送った。

国境警備隊は、脱北、人身売買や密輸の手助けをすることで経済的利益を得てきた。昨今の取り締まり強化でそれらの行為は多く減少したものの、依然として密輸や違法な送金の幇助が横行している。

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情報筋は詳細について触れていないが、この兵士は、軍官と上級者の命令で密輸を手伝うことになったが、摘発を受け兵士は逮捕された。ところが、密輸幇助を指示した上役には何のお咎めもなかったというのだ。

裁判の結果、この兵士だけが実刑判決を受け、服役することになったが、その理由について彼は「自分が送ったワイロの額が少なかったからだ」と恨みに思い、上役がいかにして多額のワイロを払って罪を逃れたかについて、信訴の手紙に具体的な状況を書いた。

また、過去に軍官や他の隊員が脱北や密輸に関与した事例を列挙するなど、国境警備隊の実態が赤裸々に綴られており、それに比べると自分の犯した罪は大したことはないと訴えるものとなっている。

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通常、兵士からの信訴の手紙は軍の上層部が受け取ることになっているが、今回は別のルートをたどって中央党(朝鮮労働党中央委員会)に届いた。それに基づき、中央党は、現地に検閲隊、つまり査察班を派遣し、不正行為がなかったか調査に入った。中央機関による検閲は、処刑など凄惨な結末に至ることもしばしばだ。

このような検閲は通常20日程度続くが、今回は開始から半月以上経っても終わる気配がないと情報筋は伝えている。つまり、検閲が極めて厳しいものとなっているということだ。検閲隊は、問題の中隊が駐屯する普天(ポチョン)郡内の国境警備隊全体に調査の対象を広げる予定だ。

厳しい検閲に国境警備隊はもちろんのこと、地域の住民の間でも不安が広がっている。中国との国境に面している特性上、地域住民は多かれ少なかれ密輸に関わっているため、累が及びかねないからだ。

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金正恩党委員長は最近、「不正腐敗との闘い」を繰り広げ、今までは当たり前のように行われていた不正行為が摘発される事例が増えている。摘発されそうになった人々は、他人、特に部下に罪をなすりつけ逃れようと必死になる。前述したとおり、下手をすると処刑されかねないからだ。