韓国情報機関、国家情報院(国情院)の李炳浩(イ・ビョンホ)院長は15日に開かれた国会情報委員会の緊急懇談会で、金正男氏がマレーシアで殺害された事件と関連し、北朝鮮の金正恩党委員長が「5年前から暗殺をねらい、継続的に試みていた」と明らかにした。
今から5年前と言えば、かつて金正男氏とメールをやり取りしていた東京新聞の五味洋治編集委員が、メールの内容をまとめた書籍『父・金正日と私 金正男独占告白』を文藝春秋から出版した直後だ。
家族の安全は…
金正男氏はメールの中で、祖父である金日成氏、父の金正日氏、そして異母弟の金正恩氏へと続く3代世襲を批判するなどしていた。 この内容に、正恩氏が激怒したであろうことは想像に難くない。
金正男氏も、本が出たことにより身の危険を感じていたようだ。その後、接触を試みたジャーナリストに「今後一切、言論(メディア)とは接触しない」と話したという。
また、父の正日氏は今日から20年前、自分の「喜び組」パーティーを暴露した妻の甥を、亡命先の韓国・ソウルで暗殺している。
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正恩氏がそれと同じ行動を取ったとしても、まったく不思議ではなかろう。
国情院の李院長はまた、中国が金正男の身辺を保護していたのか、との質問に「していた」と回答。また、中国との関係悪化も厭わず金正男氏を暗殺したことについて「(金正恩氏の)性格によるものではないか」「それ(暗殺の試み)が、その日に成就したまで」と述べたという。
正恩氏が、大国として影響力を行使し、自らの宿敵である米国と是々非々で付き合う中国に対し、反感を抱いていることは良く知られている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面中国が本当に正男氏を保護していたのなら、それもまた、正恩氏が殺意を強める理由になった可能性がある。
また、金正男氏がマカオに行こうとしていたことについて、「1週間前に(マレーシア)に来て、家族に会いに行こうとしていた」としながら、金正男氏の息子のキム・ハンソル氏も「マカオにいるものと承知している」と語ったという。
果たして、正男氏の家族の安全は、どのように守られるのだろうか。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。