アメリカ人の間で北朝鮮の「脅威感」が高まっている

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アメリカ人の間で、北朝鮮に対する警戒感が高まっている。

ロイターと調査会社イプソスが9~12日、アメリカ国内の50州に在住する計1169人の成人を対象に行った調査(複数回答)によれば、「北朝鮮は米国の脅威となる国か」との質問に対し、約86%が「そうだ」と答えている。これは、ロシアが脅威だと答えた人の82%、中国とイランに対する80%を上回りトップの数字である。

軍事手段発動の「予感」

より詳しくは、北朝鮮が脅威であると答えた人のうち約34%が「差し迫った脅威」であるとし、約27%がこれより1段階低い「深刻な脅威」であるとしている。さらに低い「中程度の脅威」と「最小限の脅威」と答えたのはそれぞれ約16%と約8%だった。

こうした傾向は、ほかの調査でも表れている。ピューリサーチが成人1502人を対象に実施し12日に発表した世論調査(複数回答)の結果によると、回答者の64%が北朝鮮の核が米国を脅かす核心要因であると答えた。これは武装勢力のIS(79%)とサイバー攻撃(71%)に続く3番目の数字だが、ロシア(54%)と中国(52%)よりも高く、単一国家としては最も大きな脅威として捉えられている。

約2年前にギャラップが同様の調査を行った際には、北朝鮮の脅威度はISとイランに続き3番目だった。

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この間の変化は、どのようにして起きたのか。

間違いなく言えることは、北朝鮮が昨年2回の核実験を強行し、弾道ミサイル開発を進展させたことが影響しているということだ。また、核開発を巡るイランと米国など主要国との交渉が合意に至り、ISの勢いが失速したことも、北朝鮮の脅威を際立たせているのかもしれない。

こうした状況は、トランプ次期政権の対北政策に影響を与えるのだろうか。

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すでに次期政権の高官就任予定者たちは議会での公聴会で、北朝鮮に対する強硬な意見を述べている。代表的なのが「マッド・ドッグ(狂犬)」の異名を持つ軍人出身のジェームズ・マティス国防長官指名者で、北朝鮮が挑発すれば「かみちぎる」と述べ、ワシントンで論議となった対北先制攻撃論についても「排除しない」と述べている。

もしかしたら、要人のこうした姿勢と発言が世論と共鳴し、北朝鮮の脅威度に対する認識をいっそう高めている部分もあるのかもしれないが、そうであればなお、ポピュリズム的な性格の強い次期政権が、北朝鮮に対して強硬に出る可能性は高いと言えるのではないだろうか。

そもそも、オバマ政権下においても、北朝鮮に対する強硬論は相当に高まっており、状況しだいでの軍事オプションの発動を予感させる動きも出ていた。

(参考記事:米軍の「先制攻撃」を予言!? 金正恩氏が恐れる「影のCIA」報告書

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次期政権は北朝鮮との対話も模索するかもしれないが、軍事面での動きが、オバマ政権より後退することは考えにくい。

金正恩党委員長は昨年の秋以降、韓国政治の混乱とアメリカ大統領選挙を様子見するように、核実験やミサイル発射などのペースをゆるめてきた。しかしそろそろ、トランプ次期政権の発足に合わせ、再び動きを活発化させるかもしれない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記