金正恩氏は3才で「射撃の名手」だった?…驚愕すべき北朝鮮の新教科書

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南朝鮮(韓国)に住むチャドリは、米帝オオカミ野郎に反対するビラを撒きました。ビラは1束に25枚。初日には20束撒き、次の日には24束を撒きました。撒いたビラの数は全部で何枚でしょうか?

北朝鮮の教科書には、思想教育の教科書のみならず、算数や音楽の教科書にすら反米思想を刷り込むため、上のような過激な記述があった。しかし、最近の新しい教科書からは、こうした内容が姿を消したという。背景には、神聖な政治ポスターを粗末に扱うなど、意識変化が顕著な北朝鮮国民に対する思想教育や偶像化の効果がなくなっていることがあると思いきや、必ずしもそうではなさそうだ。

「人間の価値」を下げる

韓国の北朝鮮向け放送局「自由北韓放送」のキム・ソンミン代表は2014年から使われている北朝鮮の教科書を入手。それによると、「思想教育を減らし、実利を追求する傾向が強まっている一方で、金正恩党委員長への個人崇拝を強化する内容が増えている」と指摘する。

また、英語教育が充実し、美術科目も新設された。その一方で、金正恩氏の個人崇拝や偶像化の強化に力を入れているとのことだ。しかし、金正恩氏のセンスを「人間の価値が下がる」とまでこき下ろす、北朝鮮のイマドキの青少年に偶像化の効果はあるのだろうか。

韓国の通信社ニューシスが入手した北朝鮮の教育綱領によると、小学校(5年制)では「敬愛する金正恩元帥様の幼年期」という科目が新設され、5年間で171時間の教育を行うこととなっている。これは、金日成氏や金正日氏の生い立ちを習う時間と同じ時間配分だ。

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小中学校の夏休みが2週間、冬休みが6週間であることを考えると、週1時間の授業を受ける計算となる。そして、新しい教科書には、やはり以下のような金正恩氏の「超人伝説」が記されているという。

・金正恩氏は3歳の頃、1秒間隔で射撃を行い、10個の的に命中させた。 ・車で未舗装の道路を疾走した。 ・7歳の頃には時速200キロの超高速船を操縦し、外国のプロとの競争で2回も勝った。

3才で銃を扱うとは、銃規制問題で揺れる米国も真っ青な話だ。また、車で疾走したというが、足がアクセルやブレーキに届くのかという根本的な疑問が生じる。

「便意」には敗北

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これら全てが真実なら、金正恩氏には、確かに偉大で卓越した指導者の資格があるかもしれないが、もちろん多くの北朝鮮国民は本気で信じているわけではない。生徒からは「抽象的すぎて神話のようだ」などと言われ、外の世界をある程度知っている若い世代には、バカバカしいと受け止められているようだ。

金正恩氏の偶像化の狙いは、権威を高めて国民の忠誠心を育むことだが、生情報として北朝鮮内部から漏れ伝わってくるのは現地指導の際に、トイレの「代用品」を持ち歩かなければならないなど、良くも悪くも人間くさいエピソードばかりだ。

誰もがウソとわかるつまらない偶像化教育にせっせと励む前に、故金日成氏、金正日氏から続く偶像化が、韓国や日本、そして世界の嘲笑の的になっていることを正恩氏自身が、一日も早く知るべきだろう。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記