北朝鮮が、独自のSNSサイトを開設していたことが明らかになった。米国の北朝鮮専門サイト「North Korea Tech」が明らかにした北朝鮮のSNSの名称は「スターコン」。スターは、強盛ネットとともに北朝鮮を代表する政府系ネットサービス「ピョル(星)」からきていると思われる。
現在、接続ができないスターコンは、スクリーンショットを見たところ、フェイスブックに非常に似通っている。
North Korea Techによると、画像や文章を掲載したり、友達を検索してメッセージを送ることもできたという。URLの国名コードは「kp」。北朝鮮が開設、もしくはなんらかの形で関与していたことは間違いない。しかし、いつ製作され、加入者がどれほどいたのかは、不明だ。
気になるのは、独自のSNSサイトを開設した北朝鮮の狙いだ。国内では、ごく一部の研究者や当局関係者以外の一般人は、基本的にインターネットにアクセスできない。よって、自国向けとは思えず、やはり、このサイトを通じて情報収集と工作、すなわち「サイバー戦」のために開設したと見るべきだ。
北朝鮮は、積極的にサイバー攻撃を展開している。つい最近も、フェイスブックを通じて韓国の政府関係者や当局者に対してハニートラップを仕掛けていた。驚くべきことに、数人がひっかかったというのだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面一方、過去には金正恩党委員長の暗殺を描いたパロディ映画「ザ・インタビュー」の公開をめぐって、北朝鮮が ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントにサイバー攻撃を仕掛けたとされているが、この事件に関しては北朝鮮の犯行ではないとの見方もあり、真相はいまだに闇の中だ。
ソニー・ピクチャーズの件はともかく、韓国情報当局によると、北朝鮮のサイバー戦士たちは、極めて優れたITエンジニア揃いで、その実力は侮れないという。彼らは、北朝鮮の情報機関「偵察総局」の命を受けて、東南アジアなど海外企業に派遣され、普段はITエンジニアとして働く。しかし、ひとたび偵察総局から指示が下れば、韓国をはじめとする対立国家にサイバー戦を仕掛けるのだ。
昼はITエンジニアだが、平壌からミッションが来れば、サイバー戦士に変身ーーまるでスパイ映画にでも出てきそうな存在だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面しかし、北朝鮮の赤いサイバー戦士たちの能力に比べると、スターコンは、そもそもSNSサイトとして、お粗末極まりないようだ。
最大の問題点はセキュリティ。スコットランドに住む18歳のアンドリュー・マッキン君は、スターコンのログイン時に「Admin」とパスワードを入力するだけで「ハッキング」に成功し、サイトの管理権限が付与された。ユーザーを削除したり、特定の単語を検索する権限が与えられ、メールアドレスも丸見えだったという。
攻撃は最大の防御と考えているのかもしれないが、せっかく実力のあるサイバー戦士たちを擁しながら、実にもったいない話だ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。