「もうダメだ。希望が消えた」食糧難の北朝鮮で絶望の声

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北朝鮮で広がりつつある「絶糧世帯」。前年の収穫の蓄えが底をつき、食べ物が一切なくなった世帯を指す。春から初夏にかけての「春窮期」には、毎年のように絶糧世帯が現れるが、コロナ鎖国による食糧不足により、例年より深刻なようだ。

そんな北朝鮮の人々にとっての希望の光が、初夏に収穫が始まる麦だ。しかし、異常気象でそんな希望は消えつつあると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、現地の農場では昨年下された中央の指示に基づき、昨秋、稲収穫後の田んぼに大麦の種を蒔いた。元々は、4月末に収穫し、食糧問題を緩和するのに役立てる計画だった。

ところが、今年に入ってからの降水量が例年の半分に満たないほどの異常少雨が続き、大麦が実を結ばず、当初の目論見が外れた形だ。

咸鏡北道と比較的気候条件の近い、韓国の江原道(カンウォンド)束草(ソクチョ)の降水量を見ると、1月は3.6ミリ(平年43.5ミリ)、2月は11.1ミリ(平年45.9ミリ)と、年初の少雨が深刻なことがわかる。(いずれも韓国気象庁の統計)栽培に多くの水を要する大麦にとっては、最悪の気象条件だ。

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農場では、大麦に実が実る4月に人員と装備を動員して、水やりを行ったものの、とてもすべてに手が回らない。中には、収穫を待たずに鋤き返して大麦を埋めてしまい、田植えの準備に入ったところもあるという。

大麦の収穫は、食糧難に苦しむ人々にとって、大きな助けとなっていたのだが、それが全く期待できない展開になってしまった。現場からは「もうダメだ。希望が消えた」との声も聞こえてくる。去年までのように、トウモロコシを植えていたら、まだなんとかなっていたかもしれない。

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咸鏡北道の反対側、北西部の(ピョンアンブクト)の情報筋も、稲と大麦の二毛作を推進するという中央の方針に基づき、現地の田んぼでは大々的に大麦の栽培が行われているが、深刻な少雨により、収穫量が昨年の半分以下になりそうだと伝えた。

中央は、人員と装備を総動員して水やりをせよと指示を下したが、そのネックになったのが、上述の「絶糧世帯」だ。一部の農場では、農民の半分が畑に出てこれないほどの状況になったとデイリーNKの内部情報筋が伝えているが、平安北道の農場でも、状況は同じようだ。

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金正恩氏は、農業問題の解決に非常に力を入れているのだが、最初から躓いた形となってしまった。そもそも朝鮮半島は、北に行けば行くほど降水量が減る気象条件。北朝鮮で農業を行うにあたって、灌漑設備は欠かせないのだが、現実はそうなっていない。大規模なハコモノ建築に予算を費やし、農業インフラの整備を疎かにし続けてきたのが、慢性的な農業不振の一因なのだ。

(参考記事:毎年凶作の北朝鮮農業、何が問題なのか?