「食糧はお前らが解決して」金正恩の責任放棄に軍幹部ら動揺

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「軍部隊の食糧問題は、お前たち地方の党委員会が責任を持って解決してやれ」

これは、金正恩総書記は今月初め、朝鮮労働党の各地方の委員会に下した指示だ。

実りの秋となるはずの時期にもかかわらず、非効率的な集団農業、相次ぐ自然災害、コロナ鎖国による肥料や営農資材の不足で凶作となっている北朝鮮では、軍糧米(軍向けの食糧)の確保を巡り、各地でトラブルが続出していると伝えられている。

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一見、その解決に金正恩氏自らが乗り出したようにも見えるが、実のところは責任の丸投げだ。詳しくをデイリーNKの内部情報筋が伝えた。

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北朝鮮で軍糧米の確保は何よりも優先される事案だが、今回の指示を受けて、各地方の党委員会では緊急会議を開き、地元駐屯の軍部隊に食糧を供給する案件が議論された。

北部の両江道(リャンガンド)では今月3日、労働党委員会、人民委員会(道庁)、保衛局(秘密警察)、安全局(警察)、検察所の責任イルクン(幹部)が集まり、非常拡大会議が開かれ、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の第10軍団、12軍団、国境警備隊25旅団への食糧供給について討議が行われた。

会議では、軍部隊に供給する食糧の確保の一環として、軍部隊が保有する食糧の量、両江道が確保してある備蓄米の状態、今後市や郡で徴発する穀物の量などを確認、把握する作業が行われた。

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軍は12月から冬季訓練に突入するが、食糧の確保が遅れていると情報筋は見ている。10日分の食糧ですら供給できない状況において、軍部隊に供給せよと命じられてもこれと言った方法はないようだ。

両江道は面積の多くを山地が占め、以前から道内での穀物の確保が難しい地域だ。この地域の経済は、合法、非合法の輸出入で成り立ち、食糧の一部は中国から輸入されていたが、コロナ鎖国と密輸の取り締まり強化によりそれも難しくなった。

(参考記事:長期化する非社会主義取り締まりで疲弊の度合いを深める北朝鮮国境地域

地方幹部はとりあえず食料確保に動くフリはしているものの、軍糧米の確保は本来国のやるべき仕事だ。それを地方に丸投げする金正恩氏の今回の指示に、幹部らは困惑しているとのことだ。結局は、協同農場からの食糧徴発、つまり搾取を強化する以外に方法はないだろう。

(参考記事:軍と国家が一斉に農場を襲う、北朝鮮「食糧難」の末期症状