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北朝鮮は今に至るまで、国内における新型コロナウイルスの感染者の発生を認めていない。その一方で、高熱、咳などコロナ感染を疑わせる症状を少しでも見せた人を次から次へと隔離している。

ところが、その隔離施設の環境の劣悪さから、コロナではなく別の病気で病死したり、ワイロを払って入所を逃れたり、症状が収まっていないのに早期退所したりする事態が相次いでいる。首都・平壌以外の13の道、直轄市で運営されている隔離施設は、ホテルや老人ホームなどを転用したものに過ぎなかったが、当局は最近、新たに隔離専用施設の建設を命じたと、デイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:「半数以上が死亡している」北朝鮮コロナ隔離施設の知られざる惨状

当局は、保健省と平壌を除く各地域の人民委員会(道庁、市役所)に対し、伝染病専門隔離施設を建設するための事前事業に着手せよとの指示を下した。これは、昨年8月の最高人民会議常任委員会で採択した非常防疫法に基づくものと思われる。

非常防疫法16条には「中央保健指導機関、地方人民委員会、該当機関は、伝染病患者と疑診者、接触者を別に分けて隔離させられる隔離施設を疫学的、封鎖的要求に応じて建てなければならない」と明記されている。また、施設の設置を国家経済5カ年計画に含め、建設状況を、計画経済を司る国家計画委員会に監督させることにした。

指示に基づき、各地域当局は住宅地から遠く離れ、人通りの少ない場所を対象地に選定するなど、作業を進めている。

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非常防疫法が採択されて1年経ってから急に隔離施設の建設が指示された背景には、現行の隔離施設の劣悪な環境が金正恩総書記に報告されたことが考えられる。

上述の通り、入所免除、早期退所を巡ってワイロが飛び交い、出所した人からその内情が伝えられ噂で広がるなど、コロナ対策に「穴」が生じる状況となっていた。そんな状況が金正恩氏に報告され、具体的な調査が行われた上で、専門隔離施設の建設に至ったもようだ。

(参考記事:「コロナ隔離中、給食横取りで放置死」北朝鮮軍の末期症状

しかし、施設新設の話を伝え聞いた住民の間からは懸念の声が上がっている。施設が精神病院や管理所(政治犯収容所)のような閉鎖施設になり、人権侵害の温床になるのではないかというのだ。

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「隔離施設は49号病院(精神病院の閉鎖病棟)や管理所のように管理されるところのようだ。一度入れば生きて出るのは難しく、その中で何が起きているか全くわからない閉鎖施設になるとすれば、さらに多くの人が閉じ込められ、死ぬことになるのではないか」(情報筋)

(参考記事:電気ショックに思想教育、拷問も…北朝鮮「精神病棟」のメチャクチャな実態

北朝鮮はそもそも、管理所の存在を公式には認めていないが、国際社会からその存在を指摘されても、今後は「コロナ疑い患者の隔離施設だ」という言い訳ができるようにもなる。

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なお、党中央委員会書記兼科学教育部長だった崔相建(チェ・サンゴン)氏が解任された背景に、隔離施設の劣悪な実態の発覚もあったと、情報筋は指摘している。