「こんなに残酷なことはない」北朝鮮兵士も動揺する無慈悲な命令

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昨年9月に北朝鮮を襲った台風9号(メイサーク)で、甚大な被害が発生した国内最大の亜鉛の産地、咸鏡南道(ハムギョンナムド)端川(タンチョン)市の検徳(コムドク)鉱山。

被災地入りした朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士は復旧作業に当たったが、人手不足から世界で最も長い10年の兵役が延長されるとの噂が出回り、不安が広がっていた。ところが、今月に入って彼らの身分が急に変えられたという。

(参考記事:災害復旧の人員不足で北朝鮮軍の兵役延長、広がる不安感

デイリーNKの軍内部の情報筋によると、人事を司る軍の隊列補充局は、検徳地区に派遣されている兵士のうち、秋に除隊(兵役満了)する予定の110人の兵士の扱いについての命令書を出した。

その内容とは、除隊後は民間人に戻り、そのまま検徳鉱山の労働者になれというものだった。これを受け、兵士たちからは「こんな残酷なことがあるか」という嘆きの声が上がっているという。

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最近、農村や鉱山など国の経済にとって重要でありながらも、労働力不足に悩む地域に、民間人を「嘆願」と言う名で半強制的に送り込んだり、兵役を1〜2年短縮された兵士を「集団配置」という形で送り込んだりすることが各地で起きているが、災害復旧に派遣された兵士も、除隊後に帰宅するのではなく、そのまま災害派遣先に残り、労働者として働くことになってしまったのだ。

革命化(下放、追放)処分の行き先にされるほど、労働、生活環境が劣悪な鉱山。誰も行きたがらず、今いる人もなんとかして逃げ出そうとするために、労働力不足に落ってしまったのだ。今回の措置は、環境の改善に取り組むより強制的に人を送り込み、立て直そうというかなり無理のある政策だ。

(参考記事:北朝鮮女性1万人、農村行きで路頭に迷う亭主たち

上述の通り、兵士の間では「兵役が延長されるのではないか」と不安の声が上がっていたが、部隊の政治部や隊列部は「集団配置は行われないだろう」と断言し、不安を打ち消そうとしていた。ところが、隊列補充局の集団配置命令が下されてしまい、結果的に嘘をついていたことになってしまった。

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部隊は兵士の不満をなだめるどころか、「銃を削岩機に持ち替えよ」などと言い出すなど態度を一変させたという。また、「今は党と首領のために忠誠を尽くすとき」などと思想教育を行い、集団配置の対象者のリストを検徳鉱山の労働部に送るなど、一連の手続きを迅速に進めている。

当の兵士たちの間では「上部の方針が下されたから、抵抗もできないままに一生を鉱山に捧げることになった」などと不満の声が上がっている。現地住民からは歓迎の声が上がると思いきや、「今行われている住宅の復旧は誰が責任を持って行うのか」と、復旧作業に当たる人員が削られるのではないかとの不安の声が上がっている。

北朝鮮もすでに梅雨入りしているが、とかく防災インフラが不足しており、昨年の被害が復旧できないままに、新たな被害を受けることが懸念されている。

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北朝鮮の対外宣伝ウェブサイト「メアリ(こだま)」は今月20日、「人民軍将兵たちが、検徳地区の鉱山村を、この世に二つとない立派な鉱山都市にするための建設工事で、日々新たな功勲を立てている」と報じているが、未だに復旧工事が終わっていないことを認めた形になる。ちなみに肝心の鉱山だが、こちらも復旧作業が続けられているものの、今に至るまで稼働がストップしたままだと情報筋は伝えている。

(参考記事:金正恩氏、鉱山労働者の誕生日を祝賀