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農繁期を迎え、窃盗多発地帯と化している北朝鮮の協同農場。

かねてからのモノ不足に加え、国際社会の制裁とコロナ鎖国によって農業に欠かせない営農資材などが輸入されなくなり、他の農場からトラクターの部品を盗む事件が続発しているのは、デイリーNKでも既報のとおりだ。

(参考記事:公開処刑より恐ろしいものは…北朝鮮「窃盗事件」多発の深層

新たな盗難のターゲットになっているのは、稲の苗床だ。詳細を、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

平安南道(ピョンアンナムド)殷山(ウンサン)郡の住民は、現地で5月15日から田植えが始まったものの、それから10日経っても郡内の協同農場での田植え実績は目標の半分にも達していないと伝えた。

その理由として住民が挙げたのは、苗床の不足だ。

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「早春から各農場は、田植えに必要な苗床供給量を正確に計算して、苗床を育てたが、コロナのせいで貿易がストップし、苗床に必要な営農資材が供給されず、苗床の稲もが半分以上枯れたり、まともに育たなかったりした」(住民)

地元当局の幹部は、田植え以前に苗床が付属している状況を無視するかのごとく、今年1月の朝鮮労働党第8回大会で金正恩総書記が示した国家経済発展5カ年計画に定められた、「丈夫な苗床を育てて、適時に田植えを終えるべき」とのお題目を唱えるばかりだという。

そんな状況で、苗床の窃盗が多発している。

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「苗床が不足し、上からは無条件で田植え戦闘を質高く終えよ、との圧力が強まるばかりの状況で、いくつかの農場は深夜に他の農場の苗床を盗み出している」(情報筋)

窃盗被害にあった農場は、苗床をを守るために、農業員が交代で夜間警備を行っている。

平安北道の龍川(リョンチョン)郡の別の情報筋は、龍川協同農場で数日前、田植えを控えて積んでおいた苗床が夜中に盗まれる事件が起きたと伝えている。

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「貧しい家を狙う泥棒はいたが、夜中に農場の苗床が盗まれるなんて、今までなかったこと」(情報筋)

苗床泥棒が横行する背景について情報筋は、やはり資材不足を挙げている。

「肥料を自主的に調達できない農場が、苗床に撒く肥料が不足し、苗がうまく育たず不足して田植えができないからだ」(情報筋)

また、理由の如何を問わず5月末までに田植えを終えられなければ、農場幹部が田植え戦闘の中間総和(総括)で処罰されることになるという事情もあると述べた。幹部から作業班長、作業班長から分組長へとプレッシャーが上から下へとかけられ、農場組織の末端にいる分組長が犯罪に手を出しているというのが実情だとも述べた。

こうした現状を見て思い出されるのは「堆肥戦闘」だ。不足する肥料を補うために、新年早々から全国各地で糞尿を集めるのだが、とてつもない量の糞尿を納めることを求められるため、ノルマを達成するために、市場で糞尿が売買されたり、糞尿泥棒が多発したり、糞尿を納めたという証明書を偽造するブローカーが暗躍したりなどの珍光景が繰り広げられる。

(参考記事:一人あたり500キロの人糞集めから始まる北朝鮮の新年