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北朝鮮が断行した兵役の短縮。今年1月の朝鮮労働党第8回大会で金正恩総書記が提示した「国家経済発展5カ年計画」を達成するのに必要なヒューマンリソースの確保が目的との分析が出ているが、そのとおりの動きが起きている。

デイリーNKの朝鮮人民軍(北朝鮮軍)内部情報筋によると、5000人もの兵士が除隊させられ「集団配置」された。

軍の人事を司る隊列補充局2部は今月20日、春の除隊対象者から5000人を選び、集団配置を行なった。職業を自分の意志で選択できる他の国と異なり、北朝鮮では、ある程度個人の希望や特性を配慮してはもらえるとはいえ、基本的に職場は国からあてがわれる、つまり「配置」されるものだ。

その中でも集団配置は、労働条件や生活環境が劣悪で、誰も行きたがらないが経済運営には欠かせない鉱山や農場などに、労働力を集団で送り込むものだ。強制だが、表面的には「志願」の形が取られる。国営の朝鮮中央通信は19日、民間人の集団配置について以下のように報じている。

【平壌3月19日発朝鮮中央通信】朝鮮労働党第8回大会以降、全国的に1300人余りの青年が金属、石炭、採取工業部門と農村をはじめ、人民経済の困難で骨の折れる部門へ志願した。

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彼らの先頭には、青年同盟の活動家が立っている。

平安北道青年同盟委員会で活動していたキム・ヨンミン氏は、人民の食糧問題、食の問題を円滑に解決すべきだという敬愛する金正恩総書記の高志を体して、故郷である大館郡大安協同農場の青年分組に志願した。

咸鏡北道穏城郡青年同盟委員会の活動家であるパク・ソンリム氏は、郡で最も立ち後れた農場の分場に志願した。

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彼らの行いは、万人を感動させ、数多くの青年の心に忠誠と愛国の火を点じている。
(以下略)

このような「志願」は、美談としてプロパガンダのネタで消費されるが、いずれの場合も半強制、或いは強制そのものだ。

「上部は、今回の集団配置対象者は誰ひとりとして例外なくリストから抜けられないと釘を差した」(情報筋)

(参考記事:北朝鮮軍に大量志願、金正恩氏の「肉弾戦士」になると言うけれど

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ただ、強制でもしなければ率先して行こうとする人は誰もいないだろう。都会で生まれ育ち都市戸籍を持つ人でも、集団配置命令を受けて農場や鉱山に送り込まれれば、農村戸籍に切り替えられる。比較的豊かな都会に戻ることは許されず、一生を生活条件が劣悪な地方で暮らすことを強いられる。

今期の除隊兵士のうち、女性や大学入学の推薦を受けた者、専門兵種や特殊部隊出身者を除く7割以上の者が集団配置の対象となったが、思いもよらぬ「災難」に本人たちはもちろん、家族からも嘆きの声が上がっている。

「鉱山、炭鉱なら、それなりの期間を働けば故郷に戻れて、身分も変わらないだろうと考えている。しかし、農村なら、農民階級に社会成分が完全に変わってしまうのではないかと心配する親たちもいる」(情報筋)

(参考記事:【徹底解説】北朝鮮の身分制度「出身成分」「社会成分」「階層」

農村で生まれ育った人々の中には、働けど働けど楽にならざる暮らしに見切りをつけて、ワイロを使って子どもを都会に送り出したり、無断で離村したりする。それにより生じた労働力不足の穴埋めを、集団配置で賄おうというものだ。そんな彼らもまた、手を尽くして農村からの脱出を図る。北朝鮮の農村は、そんな悪循環に陥っているのだ。

(参考記事:北朝鮮で深刻な人手不足、頼みの「除隊軍人」も次々失踪

ただ、最前線の地域で勤務していた者に対しては、地縁、血縁があり比較的暮らしやすい故郷に近いところへ配置するという配慮が行われている。

「苦しくつらい服務を終えた兵士たちに、(労働党に)入党もさせず社会に送り出すことをなんとか納得させたのに、さらに苦しくつらい(故郷から離れた)他の地方に集団配置するのは無理だと考えたようだ」(情報筋)

咸鏡南道(ハムギョンナムド)のある部隊では、繰り上げ除隊で、幹部登用へのパスポートとも言うべき労働党への入党ができなくなったことに恨みを抱いた兵士が、人事担当者の家に放火、20人が焼死する大惨事が起きている。

事件の再発を恐れた軍当局は、繰り上げ除隊対象者が優先的に入党できるように配慮するなどと、怒りをなだめるのに必死にならざるを得なかった。配置先の考慮も、その一環と思われるが、決して楽な軍隊生活を送っていたわけではない後方部隊の除隊兵士が割を食う結果となった。

(参考記事:「俺の人生を返せ」怒り狂った北朝鮮兵士がガソリンを手に向かった先は…