公開処刑も怖くない…金正恩「赤い貴族」のやりたい放題

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1990年代の大飢饉「苦難の行軍」の時代、困窮した労働者が、操業を停止した国営の工場から設備や資材を盗んで売り払う事件が相次いだ。

当局は公開処刑などの極刑で抑え込みを図ったが、それでも盗難の続発は収まらなかった。庶民からすれば、飢えて死ぬのも処刑されるのも一緒、との考えだったのだろう。生き延びるため、手段を選ぶ余裕などなかったのだ。

(参考記事:美女2人は「ある物」を盗み公開処刑でズタズタにされた

食糧事情が落ち着いて以降も同様の事件は相次ぎ、当局は度々摘発を行っているが、一向に収まる気配はない。今回、そのやり玉に上がったのは、咸鏡南道(ハムギョンナムド)定平(チョンピョン)郡で、青年同盟(金日成・金正日主義青年同盟)のキム副書記(副委員長)だ。しかし、従来の事例とは異なる展開となりそうだ。

現地のデイリーNK内部情報筋の伝えた事件の概要は次のようなものだ。

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事件の現場となったのは、金野江(クミャガン)第2号発電所。金正恩氏も2019年に現地指導に訪れ、昨年10月に竣工式が行われたところだ。

(参考記事:金正恩氏、金野江第2号発電所を視察

キム氏が、突撃隊の咸鏡南道旅団定平郡大隊長として現場に関わったのは、竣工式が終わった後の今年1月のこと。つまり、竣工式の時点で発電所の施設は完成していなかったということだ。ちなみに、国営の朝鮮中央通信は昨年10月31日、竣工式のことを以下のように報じている。

【平壌10月31日発朝鮮中央通信】朝鮮で忠誠の「80日間戦闘」の炎が激しく燃え広がる中、金野江第2号発電所が完工して竣工した。

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昨秋、今年1月の朝鮮労働党第8回大会に示す成果を無理やり作り出すための成果拡大キャンペーン「80日戦闘」が繰り広げられたが、実績を誇示するために外見だけを竣工式に間に合わせ、中身はすっからかんということはよくあることだ。

キム氏は、今年1月にコンクリートの打ち出しを行う時点から建設に参加したが、セメントなどの資材を横領したと、定平郡大隊の技術指導員から告発がなされた。実際、セメントが決められた量が使われていなかったこと、キム氏が横領したセメントを自宅の建設や、定平郡検察所の幹部2人の自宅の修理にも使用していたことがわかった。

経済難の中で、資材の横流しは深刻な反党行為として扱われる。キム氏は発電所の建設を妨害した逆賊として保衛部に連行された。通常の流れなら、暴言、暴力を受けながら取り調べを受けた上で、管理所(政治犯収容所)送りにされるか、処刑されるかのどっちかだ。

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ところが、キム氏の身柄は、政治犯を扱う保衛部から、一般犯罪を扱う安全部(警察署)に移され、そこで取り調べを受けている。

「キム氏の妻はパルチザンの家の出で、抗日武装闘争縁故者家族として保護されていて、重い処罰は免れるものと思われる」(情報筋)

パルチザンとは、金日成氏らと抗日パルチザン活動を行った抗日革命闘士の子孫で、「赤い貴族」などと揶揄されるほどの待遇を受けている。そんな家の出の妻を持つキム氏に、手荒な真似はできないということだ。

(参考記事:金正恩の親戚が集住する閉じられた「お屋敷町」

キム氏に対しては、軽い労働教化刑(懲役刑)で済まされるものと見られている。ワイロを積めば、強制労働を強いられることもなく、比較的早期に釈放されるだろう。一方、キム氏から自宅を修理してもらった検察所の幹部2人は既に解任されているが、どのような刑罰が下されるか、情報筋は伝えていない。

(参考記事:数百円で量刑を3分の1にできる北朝鮮の司法制度

地域住民は「基礎から手抜き工事が行われていたのではないか」「いつ発電所が崩壊するかわからない」などと噂している。