「感染より餓死が怖い」北朝鮮国民、コロナ対策で生命の危機

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日本では新型コロナウイルス特別措置法の改正にあたり、原案にあった懲役刑の罰則は、世論の反発で実現に至らなかった。しかし、世界の一部の国ではこうした罰則が既に導入されている。

韓国では昨年5月、隔離中に自宅を抜け出し療養施設に収容されたが再度逃げ出した男性に対して、懲役4ヶ月の実刑判決が下されている。また、米ABCは昨年7月、自宅隔離命令への署名を拒否したケンタッキー州の夫婦に自宅軟禁の命令を下したと報じている。さらに、ドイツでは、自宅隔離を拒否する人を、少年院を改造した施設に強制収容していると、ドイチェ・ヴェレが報じている。

北朝鮮も、コロナ規則違反者を次々に逮捕、強制収容しているが、人権尊重に配慮した上で強制隔離を行っている各国と同列に扱うことはできない。北朝鮮の刑務所と言えば、北朝鮮当局ですら人権侵害の酷さを懸念するほど環境が劣悪だ。

(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えたのは、昨年8月と11月に続き、先月末から3回目の封鎖令(ロックダウン)が下された、恵山(ヘサン)の状況だ。

(参考記事:北朝鮮のコロナ対策の移動制限、撤廃されるもわずか9日で復活

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当局は先月29日午後5時から30日間、恵山市と三池淵(サムジヨン)市に対して、ロックダウンの措置を取り、道路は封鎖、出勤は禁止、市場は閉鎖された。また、道と市の検察所の検事が、移動の取り締まりに動員されている。当初は、摘発した人を洞事務所(末端の行政機関)に連行し、教養事業(訓戒)を行った上で帰宅させていた。

しかし、一向に外出する者が後を絶たないことから、今月5日から安全員(警察官)を総動員、外を出歩いている人を片っ端から逮捕し、理由の如何を問わず労働鍛錬刑――つまり懲役刑としている。その期間は1ヶ月だ。情報筋は、既に3人が外出したという理由だけで逮捕され、刑務所送りになったと伝えている。

それにしても、これほど取り締まりが厳しいのになぜ外出するのか。その理由は食糧だ。

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そもそも「封鎖前から住民は日々なんとか持ちこたえている」(情報筋)ほどの状況に追いこまれていた多くの恵山市民は、3回目のロックダウンが急に下され、1ヶ月分の食べ物と薪を用意できなかったため、その調達のため外出せざるを得ないのだ。封鎖を命じられた地域の住民からは、「コロナ感染より餓死が怖い」との声が聞こえる。

(参考記事:「コロナより餓死が怖い」北朝鮮国民、市場封鎖に猛反発

「このままでは、残りの封鎖期間に少なくない住民が苦痛の日々を送ることになる」(情報筋)

北朝鮮の刑務所と言えば、北朝鮮当局ですら人権侵害の酷さを懸念するほどの劣悪な場所。飢えに苦しみ、食べ物を求めて外出した人を捕まえて放り込めば、たとえ1ヶ月でも耐えきれないかもしれない。

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市当局は、市民がロックダウンの期間を乗り切れるよう食糧や薪、消毒用アルコール、医薬品を配給するなどのケアを行って当然だが、取り締まりには熱心でも、配給には興味がないようだ。

両江道非常防疫指揮部は、塩で消毒水を作る方法を宣伝しているが、これに対して情報筋は怒りをあらわにした。

「実質的で肌に伝わるような対策も立てず、塩水を沸かしてコロナ防疫をしろという呆れた指示を下すだけ。こんな指示が果たして人民のためのものなのか」

(参考記事:消毒液不足の北朝鮮が新たに編み出した「驚きの代用品」

市民を苦しめるのはそれだけではない。当局は、市民に寒空の下、昼夜を分かたず地域の入り口で警備をさせている。別の情報筋によると、直立不動で立ち続けることを強いられ、勝手に歩きまわったり、座り込んだりした場合には厳罰に処すとの警告を受けている。

これは、外部の人間が町内に勝手に入ってくることを防ぎ、些細なことでもあればすぐに通報させるためのものだが、コロナではなく飢えて死にそうだと嘆く人々の不満を増長させる以外の何物でもない。