飢えた北朝鮮の一家が「最後の晩餐」で究極の選択

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北朝鮮北部の貿易都市、両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)では昨年8月と11月、市の封鎖令(ロックダウン)が下された。3週間にわたって外出や物資の移動が禁じられたが、食糧の備蓄などその準備をする時間がほとんど与えられず、飢えを伴うステイホームを強いられた。

韓国デイリーNKはその様子について、ある恵山市民の証言を得ている。

封鎖は、国家が新型コロナウイルス流入防止のため国境を封鎖したにもかかわらず、違法な越境が絶えないとの理由で実施された。しかし、国家が命じた無茶な封鎖令は、コロナ以上に住民を苦しめた。

封鎖令は、農民にも影響を及ぼした。いつまた封鎖令が下されるかわからないとの不安から、収穫した野菜を市場に出荷せず、自宅に備蓄する現象が広がっていると、取材に応じた市民は伝えている。突然の封鎖令で品物を回収する時間すら与えられず、大損したのだろう。出荷が滞り、入荷する品物が減ったことが、以前から表れていた物価高騰をさらに煽る結果を招いた。

封鎖に伴う混乱に市民の不満が高まり、当局は昨年11月の封鎖の際に、1世帯あたりトウモロコシ5キロを配給することにしたが、物量が不足し、ジャガイモに替えられた。封鎖令発令とともにコメ10キロが配給されるとの噂も流れたが、無料配布ではなく、市場の商人に、市場価格より安く売るように強いただけだった。

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封鎖期間中に警備に動員された兵士があちこちで暴行や窃盗を働き、市民をさらに苦しめた。倉庫に保管しておいた食べ物を兵士に盗まれたとの通報が相次いだとのことだが、補償は全くなかった。

(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

食べ物や薪の備蓄ができなかった人々が餓死したり凍死したりする痛ましい事故も相次ぎ、急病でも病院に行けずに亡くなってしまう人もいた。

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「生活が苦しく、家を売りに出す人も増えた。恵山洞(ヘサンドン)に住んでいた一家は、家を売り払ったカネで食べ物を買い、最後の晩餐をしてから、殺鼠剤(ネズミ捕りの薬)を飲んで一家心中した」(前出の市民)

封鎖の解除にお経済的ダメージが残り、街の雰囲気も悪くなり、市民の当局に対する信頼度は大きく悪化したという。

北朝鮮の極端な新型コロナウイルス対策は、国民の生命よりも、体制の安定を優先している。その本質を多くの国民が再認識したことは、近い将来において、かえって金正恩体制の安定を脅かす結果につながるかもしれない。