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北朝鮮の首都・平壌では今月5日から12日までの8日間、朝鮮労働党第8回大会が開催された。重要な政治イベントの前後に事件・事故が起きて「水を差される」ことを極度に嫌う北朝鮮は、大会に合わせて特別警戒期間を宣言した。

期間中には、たとえ些細なものでも事件・事故の発生は許されず、関係した者は重罰に処されるが、平安北道(ピョンアンブクト)では、国境を越えようとした人が射殺される重大事件が起きたと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えている。

党大会期間中に、現地では脱北が2件、密輸が3件発生したが、これに対して国境警備隊は銃撃を行い、3人が死亡し、2人が負傷した。

社会安全省(警察庁)が、新型コロナウイルスの国内流入を防ぐために昨年8月に出した、国境沿いに許可なく接近するものは人であれ動物であれ無条件で銃撃せよとの命令に基づくもので、実際、人間や動物が次から次へと撃ち殺されている。

(参考記事:北朝鮮軍、コロナ対策で警告通り違反者を射殺

負傷した2人は病院で治療を受けているが、うち1人は右の太ももに貫通傷を負い、一命はとりとめたものの、足に後遺症が残るものと見られている。また、もう1人は腹部に貫通傷を負ったが、傷が深く、生命が危ぶまれる状況だ。

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運良く一命をとりとめたとしても、保衛部(秘密警察)の取り調べを受けた後、教化所(刑務所)送りは免れず、生きて帰って来れる保証はない。

(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

情報筋によると、党大会期間中に現地の国境地帯を守る部隊の当直勤務の指揮官に実弾が30発、兵士には70発ずつ支給された。ただし、暴発事故を起こしてはならない、実弾は有事の際に限って使用せよ、との指示が参謀部から毎日のように下されていた。上述のように、党大会期間中には些細な事件・事故も許されないからだ。

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兵士らは、銃の扱いに細心の注意を払い、緊張感を持って勤務に臨んでいた。それにもかかわらず3人が死亡する銃撃が起きたのは、現場の状況が「有事」だったということだ。

脱北を試みた人が、国境の川に足を踏み入れようとした瞬間、空砲を発射して警告するが、川に入り、中国側に上陸しようとしたため、照準射撃をせざるをえなかったということのようだ。また、密輸業者の場合、停止命令に従わなかったため、銃撃したという。

今回の事件を受けて、軍は次のような命令を下した。

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「今後も同様の事態が起きれば、果敢に撃て。違法行為をした瞬間、もはや(相手は)共和国人民(北朝鮮国民)ではない。党が禁じた行為を行った者は敵扱いせよ」
「伝染病(コロナ)が消えるまで、国境では最前線の哨所(監視塔)のように警戒勤務で臨まなければならない。国境は防疫の最前線だ」

さらに、違反者を射殺した兵士には人民軍表彰、負傷させた兵士には連帯長表彰を行い、労をねぎらったという。一方で、現地の朝鮮労働党と行政機関のイルクン(幹部)は、まもなく行われる党大会期間の任務に関する総和(総括)において、事件の発生を許してしまったことについて、厳しい追及を受けるものと予想されている。

情報筋によると、元々党大会など政治的なビッグイベントの期間中を狙って、密輸をする人が多かったという。国境警備隊は、党大会期間中に事を大きくしないために、また、対岸の中国遼寧省は人口密集地域で、銃撃が行うとすぐに情報が海外に伝わってしまうことを避けるため、なるべく銃撃は行わないようにするものだった。

いつものように、今回の党大会を「絶好のチャンス」と考えた人々が密輸に乗り出したが、今までとは異なり銃撃を加えられたため、住民は恐怖に震えているという。

「(銃は)脅かすためにだけに使うものだと思っていたが、本当に人民を撃つとは思わなかった。軍はもはや昔とは違う」(情報筋)

本来、国境警備隊は地域住民の密輸や脱北に便宜を図り、ワイロを受け取ることで地域と共存共栄してきた。そんな図式が、昨今のコロナ対策で崩れてしまったようだ。

そもそも、人々が密輸を行うのは、コロナ対策で食い詰めたからに他ならないが、当局がそんな現実を放置したまま、人民を天を仰ぐという意味の金日成主席の座右の銘「以民為天」や「人民大衆第一主義」などと騒ぎ立てているのを聞くと腹が立つと、情報筋は現地の反応を伝えた。

(参考記事:障害のある女性を射殺する北朝鮮軍の「汚れた英雄」