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咸鏡南道(ハムギョンナムド)端川(タンチョン)市の検徳(コムドク)鉱山は、北朝鮮最大の亜鉛の産地として知られる。年間生産量は1100万トン、従業員の数は7000人に達する。

昨年9月の台風では坑道全てが浸水し、多大なる被害を受け、復旧作業が続けられている。新年を迎え、地域住民には食糧配給が行われたが、満足の行く量ではないようだ。

(参考記事:北朝鮮最大の亜鉛鉱山、台風で坑道すべて水没し死者多数

現地のデイリーNK内部情報筋によると、当局は、新年を迎えて地区の住民に10日分の穀物(コメ3割、トウモロコシ7割)、スケソウダラ3匹、酒1本を配給した。昨年の太陽節(4月15日、金日成主席の生誕記念日)にはコメ、サクラマス、酒など15日分が配給されたことを考えると、かなり見劣りする。しかし、それでも他よりはマシだ。

全国的には、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころに配給システムが崩壊し、住民は自力で食糧や生活必需品を調達することを求められるようになった。一方、鉱山、観光業、軍需産業の従事者、安全部(警察)、保衛部(秘密警察)などに対する配給は続けられてきた。

事故が多発する危険な職場とは言え、他の地方では望めない配給が得られる恵まれた地域だったのだ。そんなところでも、配給が減らされたり、途絶えたりしている。

(参考記事:コロナで困窮する観光地・七宝山でホテル従業員が栄養失調に

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配給は検徳鉱山連合企業所が行っているが、国際社会の制裁で鉱物を輸出できなくなったところに、新型コロナウイルス対策で国境が封鎖され、密輸すら困難となった。外貨が稼げなくなり、配給品が半分に減ってしまったというわけだ。

それだけではない。かつてなら3日で全体にいきわたっていたものが、今回は遅々として進んでいない。新型コロナウイルス対策のソーシャル・ディスタンシングの影響だ。

「最初は人民班(町内会)ごとに、班長が数人を指名して、配給品を配らせていたが、住民から(決められた)量より少ないとの声があがり、けんかになった」(情報筋)

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実際のところはわからないが、配給担当の住民が、一部をネコババした可能性が考えられる。そんな不満を伝え聞いた朝鮮労働党端川市委員会は、受け取る側が配給所まで取りに行く方式に変更した。

人民班で順番を決めて、10世帯ずつが配給品を受け取りに行くことにしたが、時間がかかりすぎて大晦日までに受け取れない人が続出した。これでは年を越せないと、隣人にコメを借りに行く人も出る始末だ。

情報筋は今月4日の時点で、配給品が全体に行き渡るまでさらに2〜3日はかかるとの見通しを示した。

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この地域では秋にも配給が行われたが、1世帯あたり白菜10個と大根5本だけだった。例年なら瓷に2つはキムチを漬けるものだが、昨秋は瓷半分程度しか漬けられなかった。また、他におかずはなく、新年の食卓はトウモロコシ飯とキムチだけという寂しいものとなってしまった。

この地域は岩山が多く、山を切り開いて畑にするのも難しい。既にキムチを食べ尽くしてしまったという人も現れ、絶糧世帯(前年の収穫が底をついて食べ物がなくなった世帯)の出現も秒読み段階だろう。

中央党(朝鮮労働党中央委員会)からやってきた幹部は、鉱山の稼働状況ばかり気にして、労働者の暮らしには関心を示そうとしないという。

制裁、自然災害、コロナの三重苦に出口は見えず、困窮がさらに続くことを予感させる、景気の悪い年明けとなってしまった。

(参考記事:収穫期を迎えてもなお減らない北朝鮮の「絶糧世帯」