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日本海の好漁場、大和堆。日本の経済的主権が及ぶ排他的経済水域(EEZ)内にあるが、ここ数年来、北朝鮮漁船による違法操業が相次いでいた。

東北地方の漁業関係者は一昨年、デイリーNKの取材に、北朝鮮の漁船が搭載しているイカ釣り用照明は輝度が低いため、高輝度の照明を搭載している日本の漁船に寄って来て操業を行うが、船同士が接触するなどの事故に繋がりかねないと懸念を表していた。

そんな違法操業が激減している。中日新聞は今年8月、水産庁、海上保安庁担当者の話として、昨年1~7月には巡視船が警告を発した北朝鮮船は627隻に達したが、今年の同じ期間にはたった1隻にまで激減したと報じた。

(参考記事:北朝鮮漁民「100年前の船」で無謀な出漁…日本の漁師から同情の声も

その理由については様々な分析が出ていたが、どうやらわざわざ遠くまで行く必要がなくなったというのが真相のようだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋が、現地の様子を伝えている。

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北東部の大都市、清津(チョンジン)の各区域の市場では最近、魚売り場が増え、旬を迎えたハタハタなどの魚が大量に入荷、価格も例年の半分以下となっている。

「厳冬が続き、近海魚のハタハタが大漁になっている」(情報筋)

前述の東北地方の漁業関係者は、北朝鮮漁船がハタハタ漁でもやってくると語っていたが、今シーズンは、はるか遠くの日本の東北沿岸までハタハタ漁に行く状況が解消しているようだ。価格の低下は、その影響も考えられる。

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「去年まではコメやトウモロコシなどより高く、とても手が出せなかった人々も、最近の安値で楽に買えるようになった」(情報筋)

また、去年もハタハタは大漁ではあったが、ほとんどが中国に輸出されてしまい、国内市場に出回るのはごく一部で、値段も高かった。しかし新型コロナウイルス対策の国境封鎖により輸出できなくなったことで、庶民の手が届く魚になったようだ。

清津市内の市場で、ハタハタ1キロは現在3元(約47円)台。4元(約63円)から5元(約79円)するコメ1キロより安い。国境封鎖で各地から食糧難が伝えられているが、降って湧いた天の恵みに北朝鮮庶民は大喜びだ。

(参考記事:北朝鮮の北東部で物価高騰「路上で一家4人が餓死」

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ハタハタの大漁は、青息吐息だった商人も喜ばせている。輸入品が途絶えた上に工場、企業所のほとんどがコロナの影響で稼働を停止し、売る商品がない状態だったが、今では皆がハタハタがに飛びついている。

東海岸の最大都市、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)も、ハタハタ景気に沸いている。市内の市場の商人が息を吹き返したと伝えた現地の情報筋は、ハタハタの値段が庶民の手が届くところまで下がり、食卓に彩りが戻ったと喜びを表した。

現在、来年1月開催の朝鮮労働党第8回大会で示す成果を上げるための大増産運動「80日戦闘」が行われているが、市内の各水産事業所は、水揚げを増やすために先を争って近海で取れるハタハタ漁に乗り出している。

1キロ3元台で売られていたが、今月16日の時点で2.8元(約44円)まで値下がりし、豊漁が続いているため、年末頃にはさらなる値下がりが期待でき、食糧問題で不安を抱えていた市民は胸をなでおろしているとのことだ。

このハタハタ大漁の恩恵だが、北朝鮮の全国民に行き渡るかどうかはわからない。コロナ対策で移動統制が強化されている上に、ハタハタは傷むのが早いため、獲ってすぐに冷凍したり、塩漬けや干物にしたりする必要がある。きちんと処理していないハタハタを食べて病気にでもなれば、時節柄、コロナの疑いで強制隔離されかねない。

(参考記事:「将軍様がくださった下痢」…ハタハタ食べた北朝鮮兵士が倒れる