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今年10月のある日、北朝鮮・平安南道(ピョンアンナムド)の順川(スンチョン)の交差点付近にある食堂の立ち並ぶ通りで、60代の女性が亡くなっているのが発見された。通報を受けた安全部(警察署)が身元を確認したところ、亡くなっていたのは、国内随一の製薬工場内の朝鮮労働党委員会の幹部の母親だった。

お年寄り、特に自分の親を大切にするのが朝鮮の伝統で、北朝鮮政府も手厚い福祉の対象としていたが、1990年代の経済難以降、姥捨山のように親を捨てる現象が見られるようになった。また、「口減らし」のために自ら家を出る老人も増えた。しかし、それは貧しい人々の話だ。恵まれた暮らしをしていたはずの党幹部の母親が、路上で行き倒れになっていたのはなぜか。

(参考記事:【北朝鮮国民インタビュー】コロナ苦境で口減らし、家を出る老人たち

米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋によると、その経緯は次のようなものだ。

亡くなった女性は一人暮らしで、市内の市場で商売をして生活をしていた。1ヶ月前、女性は市内に暮らす息子の家にやってきた。借金取りに家を奪われ、住むところがないのだという。

人民の声に耳を傾け、暮らしをよりよくするのが党幹部に与えられた役割のはず。ましてや、自分の母親ならなおさらのことだ。ところが、息子は母親を冷たく追い払ったというのだ。

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行き先を失った母親は、コチェビ(ホームレス)となり、道端で物乞いをしながら生きていたが、寒さと飢えでついに亡くなってしまった。

ただ、母親はずっと生活苦の中にあったわけではないようだ。別の市民は語る。

「道端で亡くなった順川製薬工場後方部の党幹部の母親は、今年の春まで一人暮らしで、商売をしていたが、特に心配なく暮らしをしていた」

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特に不自由なく暮らしていた母親に何が起きたのだろうか。

今年5月、結婚して別の地域に行っていた実の娘が転がり込んできた。嫁ぎ先で商売をしていたのだが、借金でクビが回らなくなって督促に耐えかね、実の母に無心にやってきたのだった。

娘は何もせず1ヶ月間居候していたが、母親が市場に行っている間に、借金のかたに家を売り払ってしまい、現金を持って姿を消してしまった。

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家を失った母親は、息子の家に行ってしばらくいさせてほしいと頼んだが、息子は「なぜ嫁に行った姉を家にいれたのか、詐欺の問題は姉と解決しろ」と行って、順川高級中学校の教員の妻と共に、母親を追い払ったというのだ。

この話はあっという間に市民の間に広がった。当然のことながら、強い非難の声が上がったが、事件が起きてから1ヶ月経っても、当局は党幹部に対して何ら措置を取らず、さらに非難の声が強まっている。

「息子は、母親に苦労して育ててもらったおかげで党幹部にまでのぼりつめたのに、嫁とグルになって追い出して、路上で死なせた」

非難は当局にも向かっている。

「すべての悲劇は、コロナ伝染病防疫を理由に、商売を制限され暮らしていけなくなった人々の生活対策はほったらかしにして、市場の取り締まりに熱中している当局の歪んだ姿勢がもたらしたものだ」

(参考記事:「どうやって食えというのか」北朝鮮で集団抗議活動、当局緊迫