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北朝鮮は、4月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)、2月16日の光明星節(金正日総書記の生誕記念日)など、国を上げて祝う日には国民に特別配給を行う。いわゆる「贈り物政治」だ。

徳の高い最高指導者(金正恩党委員長)のおかげで幸せに暮らせる「首領福」の物質的な表れが贈り物というわけだが、俗な言い方をすれば「カネで国民を釣る」ものだ。

北朝鮮当局は、今月10日の朝鮮労働党創立75周年の記念日の前々日(8日)までに特別配給を行うと、平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

当局は先週、「最大限に品数を増やせ」と指示を下すと共に、コメ、小麦粉、味噌、油、海産物、果物、肉類、卵、キャンディ、酒など配給すべき品物をリストアップした。

これらの製品を生産、販売する工場、企業所、食料品商店、食材やレストランを管理する給養管理所に対しては、実際にどのようなものをどれだけ配給できたかについて、総和(総括)を行うとの方針も示した。「言われたとおりにきちんと生産し、配給せよ」とのプレッシャーをかけると同時に、各工場を競わせるのが目的だ。

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はっぱをかけたものの、生産に必要な予算や資材は必要量の半分しか支給していない。残りは各工場が「自力更生」、つまり自主的に調達せよということだ。

生産指示を出しながらも原材料や予算を全く支給しない場合がほとんどであることを考えると、半分も支給したことは、当局が今回の配給に相当の意気込みで臨んでいるとも解釈できる。実際、国際社会の制裁、自然災害、新型コロナウイルスの三重苦に苛まれているわりには「それなりに頑張った」(情報筋)との評価もある。

ただし、リスト通りに配給されるのは首都・平壌、その中でも「30号対象」と呼ばれる市内中心部の6区域に住む住民に限られる。そもそもこれら地域に住み、国家機関で働く人々は、普段から肉、魚、卵を箱単位で配給されてきただけあり、特別配給の品目と量が少なければ、「民心をつなぎとめる」という贈り物の目的が果たせないのだ。

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地方では国からの配給が途絶えてから数十年経つが、平壌では最近まで配給が続けられてきた。しかし、経済難が深刻化した今年初めから配給の遅配、欠配が増え、市民の間では不満と不安が高まっていた。今回の特別配給には、そんなネガティブな感情を一掃しようという目論見があるようだ。

(参考記事:首都エリート層も配給停滞…金正恩「経済困窮」の末期症状

一方で、平壌でも「410号対象」と呼ばれる残りの12の区域と2つの郡に住む住民が受け取る配給品は、「30号対象」に比べると見劣りする。それでも、地方住民とは比べ物にならない。情報筋によると、地方は平壌とは異なり、各地方政府が配給を行い、品目や数は決められていない。地域によってはジャガイモやトウモロコシの配給にとどまるという。

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「無い袖は振れない」ということだろうが、北朝鮮で重要視される整周年(5や10で割り切れる年)の記念日に、ろくなものがもらえないとなると、逆に世論の悪化をもたらすリスクがある。だからといって、「元帥様の人民愛」などと大々的に宣伝すると、期待が高まりすぎる可能性がある。

一例を挙げると、2016年5月の朝鮮労働党第7回大会のときに、「全国民に45インチの高級液晶テレビなどの高級家電が配られる」という荒唐無稽な噂が立ってしまった。配給しなければ強い不満が出ることが必至であるため、当局は党大会の参加者に液晶テレビを配った。それでも、対象外となった一般庶民からは強い不満の声が上がった。

(参考記事:「特別配給」に北朝鮮庶民の期待膨らむも当局は浮かない顔