金正恩氏の「心配ごと」あざ笑った幹部12人に迫る運命の日

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北朝鮮は、「動員」で国が成り立っている世界でも数少ない国だが、韓国・高麗大学韓国史学科のキム・ジェウン講師の論文「北朝鮮の民間資源動員政策と日常的動員体制の形成」によると、それは日本の植民地支配から解放された直後から始まった。

各地の里(村)の人民委員会(村役場)は、村民から税金として様々な金品の供出を強いたが、それによりトラブルが続発した。その解決策として提示されたのが労力動員だった。

それに法的根拠を与えたのが、1948年5月27日の北朝鮮人民委員会決定第144号「建国労力動員に関する規定」だった。国家的に重要な建設事業に、18歳から55歳の男性、18歳から50歳の女性は年間20日間、無報酬で動員するという内容だ。

ところが、動員に応じる人が非常に少なかったため、1950年3月25日に「義務労力動員に関する規定」を発表。動員をシステマティックに記録すると同時に、応じなかった者を強制的に動員するようになった。

やがて、動員は一般人民のみならず、幹部を統制する手段としても使われるようになった。1970年代後半からは、金正日総書記の指示で「金曜労働」と称し、朝鮮労働党や政府機関の幹部が強制的に動員されるようになった。

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この金曜労働の一環として、最近、梅雨の長雨による水害が発生した現場に投入された地方の幹部たちが、サボって酒を飲んでどんちゃん騒ぎをしていたことが明らかになった。

地元住民からは「水害対策では元帥様(金正恩党委員長)もがんばっているのに、党のイルクン(幹部)がそれをあざ笑うかのようにどんちゃん騒ぎだなんて、度胸があるもんだ。いったいどんな罰が待っているやら」などといった声が出ている。

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黄海北道(ファンヘブクト)の銀波(ウンパ)郡の水害被災地では今月7日、道、市、郡の幹部や職員が働いていた。多くの人が真面目に働いていたが、現地のデイリーNK内部情報筋によると、そのうち12人は午前10時から1時間だけ働き、そっと現場から離脱して作業が終わる午後5時半まで帰って来なかった。

彼らは郡の中心部にある食堂に入り、25キロのヤギを2頭も平らげ、酒を飲んでいたのだ。

「党幹部は金曜労働に来ると、上役の目が気にならなくなるので休みの日のように考えて、仕事は適当に済ませ、接待を受けて帰るのはいつものこと」(情報筋)

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実際、毎年春と秋に行われる農村動員でも、都会から支援にやって来た人々は酒を飲んだり、トランプに興じたりして、仕事をさぼる。そんな支援者の宿泊費、飲食費は現地の農民が負担させられ、秋の分配からは支援者の分け前を控除される。さらには、支援に来て食糧を盗む輩もいる始末だ。また、時間の無駄だと、上役にワイロを渡して動員を免除してもらう人も少なくない。

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しかし、ここはそんなことが許される「ただの被災地」ではなく、「特別な被災地」だった。

現場で働いていた職員は彼らの傍若無人に怒り、里の党委員長と農場の管理委員長を経て、道党(朝鮮労働党黄海北道委員会)の委員長に報告した。道党委員長は怒り狂った。

「全国が水害で大騒ぎとなり、元帥様(金正恩党委員長)が直接いらして、ご心配の現地了解をなさったというのに、苦しいときに先に立つべき党のイルクン(幹部)が、心のない人のように酒を飲んでどんちゃん騒ぎをしていたとは、裏切り以外の何物でもない」

国営の朝鮮中央通信は、金正恩氏が水害に見舞われた黄海北道(ファンヘプクト)銀波(ウンパ)郡の大青(テチョン)里を視察したと報じている。これが報道されたのは、幹部らが現場に動員された日と同じ今月7日。彼らはこのことを知らずに、羽目を外してしまったのだろう。

(参考記事:金正恩氏が水害被災地を視察…戦略予備物資供給を指示

彼らは翌日に解任、撤職(更迭)された。一般の農場員に降格となり、被災地での復旧活動をやらされている。とりあえずはそれで収まっているが、金正恩氏の意思に背くような今回の問題行動。軽い処分だけでは済まされない可能性も考えられる。

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