金正恩「あらゆる虐待の温床」で起きている見逃せない変化

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北朝鮮の金氏一家3代(金日成・金正日・金正恩)の世襲体制と思想に反する住民を閉じ込め、監視するために重要な役割を担っているのが、「管理所」と呼ばれる政治犯収容所だ。そこでは、あらゆる形態の虐待と人権侵害が横行しているとされる。

その実態は厚いベールに包まれているが、近年になって収監者数が大幅に増えたとの情報が出ている。

(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

韓国デイリーNKの複数の内部情報筋によると、2012年にスタートを切った金正恩体制の初期においては、秘密警察である国家安全保衛部(現国家保衛省)が運営する管理所には、約13万人が収監されていた。それが2020年3月現在では、約16万人にまで増えたとのことだ。

具体的に見てみると◇平安南道(ピョンアンナムド)の价川(ケチョン)にある「14号管理所」には4万3千人◇咸鏡南道(ハムギョンナムド)耀徳(ヨドク)の「15号管理所」に5万5千人◇咸鏡北道(ハムギョンブクト)化成(ファソン)の「16号管理所」に2万4千人◇咸鏡北道の清津(チョンジン)にある「25号管理所」に4万人がそれぞれ収監されているという。

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このうち清津の25号管理所は、もともと収監者数は少なかったのだが、昨年10月頃に急激に増えた。情報筋によれば「50人が収容されていた部屋に、今では150人が詰め込まれている。主に平壌の方で外貨稼ぎ事業に従事していた人々が連れてこられた」という。国のための外貨稼ぎに従事する中で、着服などの不正が露見して一斉に逮捕されたとものと思われる。

ほかに、警察に当たる社会安全省も政治犯収容所を運営している。14号と同じく价川にある17号(2万1千人)と、平安南道(ピョンアンナムド)北倉(プクチャン)の18号(2万6千人)だ。これら2カ所は一時閉鎖されていたが、金正恩体制になって復活したとされる。国民に対する監視と統制を強化しようという姿勢の表れだ。

ある情報筋は、「教化所(刑務所)に送られる犯罪者よりも、より重い罪を犯したと見なされた人々がここに収監させている。彼らは『1号の方針(キム・ジョンウンの指示)』で許しが出れば社会に復帰できるという希望を支えに耐えているが、生活態度が問題視されたらすぐに国家保衛省の管理所に送られてしまう」と説明する。

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国家保衛省が運営する管理所は、刑期満了後に社会復帰が可能な「革命化区域」と、何があっても絶対に出てこられない「完全統制区域」とに分けて運営されてきた。韓国には、革命家区域に収監された経験のある脱北者は複数いるが、完全統制区域から脱出してきた例はいまだに一つもない。

デイリーNKの現地情報筋によれば、革命化区域と完全統制区域を分けて運営する方式は今も維持されているという。ただ、他の脱北者グループからは「管理所の革命化区域は撤廃され、完全統制区域だけになった」との主張も出ているが、実態の解明は極めて困難と言える。