金正恩「拷問部隊」幹部らが口封じで消された重大事件

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北朝鮮の両江道(リャンガンド)で、大量の金塊を国外に持ち出そうとした一味が摘発された件は、デイリーNKジャパンでも既報のとおりだ。

容疑者をめぐっては当初から重罰が下されることが予想されていたが、予想を超える厳しい処罰が行われた模様だ。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

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この事件は、40代男性の密輸業者が先月2日、国境を流れる鴨緑江で中国側に金塊58キロを密輸しようとしたが、加担していた国境警備隊中隊の保衛指導員が量の多さに驚き通報、7人が逮捕されたというものだ。

保衛部は、背後に有力者かいるものと見て密輸業者を厳しく追求した。当初は口を割ろうとしなかったが、やがて事件の主犯が国家保衛省(秘密警察)後方局10121軍部隊所属の貿易会社で総合担当部長を務める上佐と、財政課長を務める少佐の2人であることを自供した。

国家保衛省は、拷問や公開処刑、政治犯収容所の運営を担い、金正恩体制の恐怖政治を支えてきた機関だ。その幹部たちはもちろん、様々な権限を握っている。

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金の出どころは、この会社が管理、運営する平安南道(ピョンアンナムド)檜倉(フェチャン)にある金鉱だった。

檜倉の経済はほぼ金鉱に頼っており、郡内にある複数の金鉱は10月26日総合企業所所属となっているが、実際は貿易会社やトンジュ(金主、新興富裕層)が坑道を所有している。トンジュが企業所から坑道を買い取り、操業を行い、産出された金の一部を企業所に収めている。

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主犯の2人は、金鉱を所有するトンジュと結託し、掘り出した金58キロを密輸業者に指示して中国に密輸しようとした。

この事件の発覚を知った国家保衛省はもみ消しを図ったが、それを察知した中央は、事件の捜査を国家保衛省から社会安全省(警察庁)に移管することを指示した。

結局、主犯の2人は秘密裏に処刑された。中央の高級幹部が関わっていると言われていたことを考えると、2人は口封じのために早急に処刑された可能性もある。

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当初、口封じで処刑されると見られていた密輸業者だが、首謀者の名前を自供したことと、単に運び屋だった点に情状酌量の余地があるとして、軽い罪で済まされることが予想されていた。また、通報した保衛指導員も同様の扱いが予想されていたが、7年にわたって密輸に関与していたことが発覚。

業者は無期懲役の判決を受け、咸興(ハムン)教化所(刑務所)に収監された。保衛指導員は、生活除隊(不名誉除隊)の処分を受けた。成分(身分)や賞罰が記録される「個人資料」にも傷がついてしまい、社会での活動が制限されてしまう。国境警備隊の副小隊長は、軽犯罪者が収容される軍刑務所の労働連隊送りになった後で、生活除隊となる予定だ。

今回の事件を受け、国境警備司令部は、副中隊長のいた部隊に対して今月15日までを「自首期間」と定め、今までに行ってきた密輸業者を庇護する行為、同僚の密輸に加担する行為などを1人あたり20ページの文書にまとめ、提出するよう命じた。

対象が今後広がるとの見方もあり、問題となった中隊所属の兵士に対しては、他の部隊の兵士たちから「お前らのせいで自分たちまで面倒なことになりかねない、逆賊になりたくなければ、洗いざらいさっさと書いて出せ」とプレッシャーを掛けているという。

そもそも、国境警備隊は、密輸や脱北に加担し、その見返りとして受け取ったワイロで比較的豊かな暮らしができる部隊として人気がある。つまり、誰もが多かれ少なかれ違法行為に加担しているということだ。

部隊全体が殺伐とした雰囲気に包まれているが、今後3ヶ月は学習、批判などが続くだろうが、それが過ぎれば統制が緩和され、元のように密輸に手を出すだろうと情報筋は見ている。さもなくば、ワイロを払ってわざわざ国境警備隊に入った意味がなくなる。

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