金正恩「残酷病院」に充満する恐怖と苦痛と恨み

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北朝鮮国営の朝鮮中央通信は19日、金正恩党委員長が平壌総合病院の建設現場を視察し、現場の幹部らを厳しく叱責したことを伝えた。

3月に着工した同病院の建設は目下、金正恩氏が最も重視するプロジェクトである。

同通信によれば、金正恩氏は建設現場を見てまわり「困難な環境の中でも建設が非常に速いスピードで進捗した」として、まずは建設労働者の労をねぎらった。

しかし、同プロジェクトの推進に当たるタスクフォース 「建設連合常務」の幹部たちに対しては、「建設作戦を構想した意図とは背ちして設備、資材の保障活動で政策的にひどく脱線しており、各種の『支援活動』を奨励することで人民にむしろ負担をかけている」と怒りを露わにし、「責任のある活動家を全てすげ替えて重大な問題として取り上げることについて指示した」という。

現場の幹部たちは、同氏の怒りを受け止めながら恐怖に震えていたことだろう。金正恩氏は2016年、スッポン工場を視察した際に管理不備に激怒し、支配人を銃殺。視察時の映像をテレビ放映させ、自らの恐ろしさをアピールする残忍さを見せた。

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(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導

そのことを知らない官僚は、北朝鮮にはほとんどいないのではないだろうか。では一体、金正恩氏は何に激怒したのか。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、北朝鮮国民の生々しい怒りの声を伝えている。

「3月の着工後、病院の建設費は毎月、現金で各世帯から徴収されている。また現金以外にも、病院建設の後方支援のためだとして、飼っているブタを寄付するよう強要された人もいる。そして住民たちがいちばん憤っているのは、新型コロナウイルスのために国家が非常事態を宣言した状況下、当局は住民が生計を立てるための商売を禁じておいて、しかもかわりの配給も寄越さず病院建設に乗り出し、その建設資金を住民に押し付けていることだ」(平安北道のある住民)

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そして、こうした怒りは当局幹部だけでなく、金正恩氏にも向かっているという。

「住民たちは、いますぐこの病院が必要なのか、住民への配給とどちらがより重要なのかについて問題にしながら、実績作りのために貴重な資金を蕩尽する最高尊厳(金正恩氏)を露骨に批判している。最高尊厳が急に病院建設の現場を視察して『住民の負担が重くなっている』と指摘したのは、人民愛の表れではなく、憤った民心をなだめるための方便に過ぎない」(同)

実際、金正恩氏が「人民愛」をアピールせんとぶち上げた同病院の建設現場では、今年10月10日の朝鮮労働党創立75周年までに完成させよとする無茶な工期設定のため、すでに約20人もの兵士や労働者が墜落死するという、本末転倒の事態が起きている。

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経済制裁と新型コロナウイルス対策の貿易停止で経済難が深まる中、北朝鮮が同病院を完成させられるのか疑問だが、仮に出来上がったとしても、兵士や労働者、住民らの恨みがこもった「残酷病院」で、誰が治療を受けたいと思うだろうか。