金正恩氏のコロナ対策失敗で「いけにえ」にされる人々

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北朝鮮には「革命化」という処分がある。処分とは言っても、刑法に明記された刑罰ではない。

何らかの過ちを犯した幹部の職責を解き、地方の協同農場や炭鉱に送り込み、辛い肉体労働をさせることで、朝鮮労働党や首領(金正恩党委員長)に対する忠誠心を高めるという一種の思想教育だ。

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この革命化は、トップクラスの幹部に対しても下される。例えば、現在は最高人民会議常任委員長のポストにある崔龍海(チェ・リョンヘ)氏は2015年、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の協同農場に送り込まれている。実の息子がご禁制の韓流ドラマを見ているのがバレて、自ら処分を買って出たと言われているが、崔氏には何かと悪い噂がついてまわる。

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平壌で何不自由なく暮らしてきた幹部にとって、山奥の寒村での肉体労働はさぞ身にしみることだろう。それでも、一定の期間が過ぎれば呼び戻してもらえることを考えると、処刑されるよりはマシかもしれない。

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最近、新たに革命化の対象となったのは北朝鮮北部、両江道(リャンガンド)の大紅湍(テホンダン)郡で、地域の朝鮮労働党の委員長を勤めていた人物だ。詳細を米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

現地の情報筋は名前を明らかにしていないが、郡党(朝鮮労働党大紅湍郡委員会)委員長を勤めていた人物が、1ヶ月ほど前から郡内の農場でヒラの農場員として働いていると伝えた。

現地では今年3月ごろから高熱を訴える患者が続出し、21人が死亡した。住民の間では「コロナじゃないか」との不安が高まったが、郡の防疫機関は「普通のインフルエンザや肺炎だ」として、これといった対策を取らなかった。

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その後も亡くなる人が相次いだことで、ようやく当局は郡内での消毒作業を行い、対策を立てようとしたが、地域住民は「牛を盗まれてから牛舎を直す」(泥棒を捕らえて縄をなうの意)ではないかと、当局を露骨に批判するようになった。

報告を受けた中央党(朝鮮労働党中央委員会)は、悪化する世論を鎮めるために、すべての責任を郡党委員長になすりつけて更迭し、革命化の処分を下したというものだ。

他の地域でも、地域の幹部に責任を転嫁する動きが起きている。

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平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、現地でも新型コロナウイルスに感染した疑いのある患者が次々に死亡する事態を受け、対策を立てるのではなく、地方の党幹部に全責任を負わせて出党(党からの除名)処分を下したと伝えた。

この情報筋は、政府のコロナ対策は国民の生命を守ることではなく、首脳部のいる平壌への感染拡大を防ぐことに焦点を合わせていると指摘し、このままでは何人ものクビが飛ぶことになると懸念を示した。また、「まともにコロナ対策をするのなら、下の者に責任を取らせるのではなく、人民の命を救うために、国際社会の支援を受け入れなければならない」とする一部の幹部から上がっている声を伝えた。

このように、現場幹部ばかりが責任を問われるのは、次のような背景がある。

北朝鮮の新型コロナウイルス対策は、金正恩党委員長が自ら主導している。

しかし、金正恩氏は神聖不可侵且つ無謬の存在だ。彼自身だけでなく、彼が主導した政策に対しては、何びとも批判することは許されない。また、何らかの行政的な処分が、金正恩氏の政策を否定する形になってもいけない。

たとえ間違った政策で国民の生命、財産が奪われようとも、それは金正恩氏の責任ではなく、金正恩氏の指示、方針を忠実に実行できなかった幹部に責任がある。

中央の幹部は責任を逃れるため、地方の幹部に責任をなすりつける。運悪く引っかかった人が責任を取らされるというわけだ。