金正恩が焦る平壌の食糧難…解決策は「市民追放」

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今月7日に行われた北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会第7期第13回政治局会議。金正恩党委員長は、首都市民の生活保障において早急に解決すべき問題を具体的に指摘し、会議では、平壌市民の生活における問題を解決するための重要問題が討議されたと、国営の朝鮮中央通信が伝えている。

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それもそのはず、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の時でさえ行われていた平壌市民に対する食糧配給が、このところ長期間にわたり止まっているというのだ。

平壌のデイリーNK内部情報筋は、今年に入って配給が行われたのは3月までで、それ以降は止まっていると伝えた。その3月の配給も、1、2、3月の3ヶ月分をまとめて行い、1ヶ月分の量も12日分に減らされ、コメではなくトウモロコシが配られる有様だったという。

一方で朝鮮人民軍(北朝鮮軍)、朝鮮労働党や国家機関に勤める職員に対しては、量が少ないながら配給は続けられているとのことだ。

当局は配給停止の理由を「新型コロナウイルスによる世界経済の停滞」と「帝国主義者どもの封鎖(制裁)策動」によるものと説明しているが、使い古された帝国主義者云々といった言い訳を信じる市民はあまりいないだろう。

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案の定、市民は強い不満を持ち、「第2の苦難の行軍ではないか」と口々に語っている。金正恩氏が、党の最高幹部を集めた政治局会議で平壌市民の生活問題を討論した背景には、このような背景があったものと思われる。

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北朝鮮で最も豊かな平壌だが、配給の停止で、コメに山で取った山菜を混ぜて炊いたものでしのぐ人が少なくないと情報筋は伝えている。当局は、人民班(町内会)を通じて、絶糧世帯の実態調査を始めた。絶糧世帯とは、食べるものが底をついた世帯、つまり「餓死予備軍」を指す。

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食い詰めた人々は、少しでも生活費を稼ぐために、道端で露天商を開いている。午前4時から7時まで開かれ、8割が食料品を扱っている。平壌では取り締まりが厳しく、しばらく姿を消していたが、この苦境で復活したとのことだ。

この苦境に平壌市当局が打ち出した対策は「口減らし」だ。

当局は、人口移動の実態調査も行っている。本来、平壌市外の人は、許可がなければ平壌への入市は認められないはずだが、ワイロやコネなど様々な手段を動員して、平壌に密入国ならぬ密入市しようとする人が後を絶たない。そんな人のせいで、食糧が不足していると当局は見ているのだ。

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住民登録を司る社会安全省(旧称人民保安省)第8局は今年4月、30号(市内中心部)と410号(周辺地域)において、平壌市民証を持たずに居住している人に対して平壌追放令を下した。

その中には、結婚して平壌にやってきた人も含まれる。夫婦のどちらかが平壌市民証を持っていないとすれば、家族全員が平壌から出ていかなければならないというとんでもないものだ。

「首都平壌市管理法」という法律には次のような条文がある。

「平壌市民は国の政策貫徹において模範となり、首都市民としての栄誉を守らなければならない。平壌市民が国の法秩序を著しく乱した場合には、平壌市民証を回収する」(第30条)

つまり、当局の都合次第で、市民をいくらでも平壌市から追放できるということだ。

こうして口減らしのために市民を追放したり、区域ごと平壌市から外したりなどの人権無視の政策が今までも取られてきた。

障碍を持つ人々に至っては、金正日総書記は1980年代初頭に下した「障碍者が革命の首都平壌にいると、外国人に不快な印象を与えるから、追放せよ」との指示に基づき、平壌から追放されている。

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