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北朝鮮の男性は実に酒好きだ。「酒量の多さが男の器の大きさを示す」という考えが根強い上に、娯楽が乏しいことも関係しているだろう。当局は、飲酒を「社会主義的生活気風」に反すると考え、取り締まりや教育を繰り返しているが、あまり効果はないようだ。

当然、酒の上での失敗も続出するわけだが、2017年11月に、軍事境界線上にある板門店を通じて韓国に亡命した朝鮮人民軍(北朝鮮軍)兵士だったオ・チョンソン氏も、酒に酔った勢いで亡命したとの報告がある。

(参考記事:銃撃浴び重傷の北朝鮮兵士「酒に酔って亡命」…韓国情報機関が報告

両江道(リャンガンド)金亨稷(キムヒョンジク)郡に住んでいた男性Aも、酒に飲まれた一人だ。そして、その酒のせいで非業の死を遂げた。現地のデイリーNK内部情報筋が、その経緯を伝えている。

Aは20数年前、郡の病院に勤める医師の女性Bと結婚したが、家庭を顧みず、酒びたりの日々を過ごしていた。クダを巻き、家にある食べ物や家財道具を手当り次第売り払い、そのカネで酒を飲み、村でも「ダメ男」として悪評が立っていた。

BはAの酒癖の悪さに匙を投げ、離婚することを決意した。しかし、当局は離婚を「革命の敵」「子どもの未来を食いつぶすエゴイズム」と規定し、社会悪とみなしており、裁判離婚しか認めていない。

(参考記事:「暴力は離婚理由にならない」北朝鮮の司法が生み出す「捨て子」増大

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Aは離婚に同意しないばかりか、Bに「殺してやる」とすごんだ。結局AはBとの離婚を断念、致し方なく結婚生活を続けることにした。そんなときに現れたのが、国境警備隊に務めるCだ。BとCはいつしか恋仲となった。

事件の前日、Aはいつものように台所にあった食べ物を市場で売り払い、そのカネで酒を飲んでいた。それを見咎めたBに対しえ「小言に頭にきた」と暴言を吐き、Bの勤務先の病院に斧を持って乗り込み、大騒動を繰り広げた。

翌日、Bは不倫関係にあるCと共謀し、Aに睡眠剤を飲ませ、眠らせた上で、首を絞めて殺害した。

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Bは犯行を隠蔽すべく、「Aが酒を飲んで、寝ているときに突然死した」とごまかそうとしたが、その証言にAの親戚が疑いを持ち、保安署(警察署)に司法解剖を要求した。その結果、殺害されたとの結論が出て、BとCは逮捕された。

二人は15日間の取り調べを受け、Bは先月中旬に無期懲役の判決を受け、价川(ケチョン)教化所(刑務所)に、Cは、懲役15年の判決を受けて咸興(ハムン)教化所に収監された。

北朝鮮の刑務所は衛生、食事、住環境などすべての面において劣悪だ。無期懲役刑に服役しているBが生きて出所する日は来ないかも知れない。

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(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

そんなBに地元住民は同情的だ。

「今みたいに苦しいときなのに、食べ物と家財道具を売り払い、酒浸りの人間のクズを誰が許すもんか」
「病院に斧を来られて騒ぎを起こされた女性が、まともな精神状態なわけがない」

一方、共犯として逮捕された男性の家族は保安署にやって来て抗議したが、「司法機関に歯向かった」として、保衛部(秘密警察)の捜査課待機室に勾留され、取り調べを受けているという。

(参考記事:北朝鮮カップルを殺意に狂わせた「韓流AV不倫」の罪と罰