コロナ不況で食い詰めた人々が目指す北朝鮮の「黄金郷」

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北朝鮮は知る人ぞ知る鉱物資源の宝庫だ。正確な統計が公表されていないため詳細はわかっていない部分が多いのだが、韓国鉱物資源公社が2009年に行った調査では、金の埋蔵量は2000トンと推定され、それが正しければ世界9位となる。

中でも、中国との国境に面した両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)市から8キロ離れたところにある大鳳(テボン)鉱山は、純度98.7%の質の高い金が産出されることで知られる。

(参考記事:北朝鮮「金」で制裁を打破せよ!…世界9位の埋蔵量に期待

大飢饉「苦難の行軍」が終わって間もない2000年代初頭には、多くの人々が金を求めて押し寄せ「ゴールドラッシュ」が起きたことがあったが、今年になって再び、砂金に加えて重石を求めて多くの人が群がっていると現地のデイリーNK内部情報筋が伝えている。

彼らの多くは、もともと市場での商売で食いつないでいた人々だ。しかし、恵山の市場はコロナ対策としての国境封鎖に加え、公債発行に合わせた外貨使用の禁止、農村支援戦闘による営業時間の制限で、非常に厳しい状況に置かれている。食い詰めた人々が、鉱山に押し寄せているのだ。

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一方、鉱山にやってきた人の中には農民もいる。ジャガイモの種イモを植える作業が終わり、手が空いたので出稼ぎにやってきたわけだが、食うや食わずの協同農場での生活に見切りをつけて、都会や鉱山に働きに出る人が相次いでいる。

(参考記事:北朝鮮版「ゴールドラッシュ」…砂金採りに賭ける農民の希望と現実

大鳳鉱山は、資金や物資の調達を行う朝鮮労働党39号室の管理下にある。経済制裁と国境封鎖の中にある今でも、39号室はなんとかして金の販売で利益を上げようとするだろうと見た人々が、「儲かるかもしれない」と押し寄せているということだ。

さらには、金を求めてやってきた人々目当ての商売も広がっている。

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鉱山に行く唯一の交通手段は船だ。そして、採掘した砂金と重石を運ぶのに必要な三輪バイクも必要だ。これらの利用者は1日数百人に達し、船や三輪バイクを持つ人は大儲けしている。こうした儲け話を伝え聞いた朝鮮人民軍(北朝鮮軍)や保衛部(秘密警察)までビジネスに乗り出す有様だ。

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また、鉱山周辺に立ち並ぶ多くの商店や露天商が儲かっているのも言うまでもない。さらには働きに来た人々に宿を提供する人、「デコ」と呼ばれる金ブローカーなど、様々な人が入り乱れ、ゴールドラッシュの様相を呈しているのだ。

このようにして掘り出された金は、中国に密輸されると思われるが、国境封鎖の影響で難しい場合は国内向けに出荷される可能性もある。自国通貨への信用度が低い北朝鮮では、トンジュ(金主、新興富裕層)や幹部は資産を外貨で持つことが多いが、国家は金を売ることで外貨を国庫に吸収できるからだ。