若い女性を「ニオイ拷問」で死なせ…北朝鮮で続く人権侵害

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2016年の1月は、朝鮮半島情勢の大きな変わり目だった。

前年8月、軍事境界線付近で韓国軍兵士が北朝鮮の地雷に接触。爆発で重傷を負ったのをきっかけに、南北の軍事対立は開戦寸前までエスカレートした。

北朝鮮と韓国はギリギリで危機を回避するとともに、平和に向けた対話に転じた――と見えたが、それは北朝鮮の欺瞞戦術だった。年が明けるや北朝鮮は対話姿勢をかなぐり捨て、3年ぶり4回目の核実験を強行。その後も核実験と弾道ミサイル発射を繰り返し、2017年には米国との軍事対立がピークに達した。

その後、2018年に入って以降、金正恩党委員長が米韓との対話路線に転じたのは周知のとおりだが、それも停滞して久しく、来年には金正恩氏がまたもや「大暴れ」する雰囲気が強まっている。

2016年に入り、金正恩氏が強硬路線に突入する理由のひとつに挙げたのが人権問題だった。

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同氏は同年1月1日に発表した施政方針演説「新年の辞」の中で、「(米国が)追随勢力を押し出して反共和国『人権』謀略騒動に狂奔しました」と言及。また、同国政府が水爆実験の成功を発表した同年1月6日の「特別重大報道」でも、「米国は敵対勢力を糾合してありとあらゆる対朝鮮経済制裁と謀略的な『人権』騒動にこだわり、われわれの強盛国家建設と人民生活の向上を妨げて『制度の崩壊』を実現しようと血を食んで襲いかかっている」と非難した。

対話が進んでいる間、トランプ米大統領は北朝鮮のこうした姿勢に配慮して、人権問題での圧力を前面に出さなかった。しかし言うまでもなく、この間にも北朝鮮国内での人権侵害は進行していた。

たとえば、北朝鮮北部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)にある全巨里(チョンゴリ)教化所(刑務所)は、北朝鮮の拘禁施設の中でも虐待の横行に関する情報が広く知られている所だ。

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特に、中朝国境地帯と近いことから、脱北を試みて逮捕された人が多く収容されている。近年では女性の収容施設が拡張されており、口では説明できないような虐待が行われている。

(参考記事:北朝鮮、拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も

現地の情報筋は5月、韓国デイリーNKの電話取材に対し、施設内で発生した虐待死の事例について次のように説明した。

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「海外から強制送還された1人の若い女性が栄養失調になったため、教化所当局は彼女を食堂勤務に移した。しかしそれは、残飯でも与えて栄養を摂らせようというような『配慮』からの措置ではなかった。『食べ物のにおいでもかいで生きてみろ』ということだったのだ。この女性は間もなく死亡してしまった」

教化所当局が、何を目的にこのような措置を取ったのかは詳らかでない。しかし、何が目的であったにせよ、飢えている人間に食べ物を与えず、においだけをかがせるという行為は拷問以外の何物でもない。

このような証言は、北朝鮮国内の情報筋や脱北者を通じて数多く聞くことができる。いくら米朝首脳の対話が進んでいても、なかったことにはならない。

かくして今年も、北朝鮮における人権侵害を強く非難し、速やかな改善を促す決議案が国連総会で採択された。北朝鮮が強く反発するのは明らかだが、それが朝鮮半島情勢をどのような方向に動かすかが注目される。