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皆が平等な社会を目指していたはずの北朝鮮だが、今ではすっかりカネとコネが物を言う格差社会と化してしまった。闇に埋もれようとしていた理不尽な事件が明るみに出た。

咸鏡南道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた事件のあらましは次のようなものだ。

2017年8月、咸鏡南道高原(コウォン)郡で18歳の青年がバイクに乗っていて、歩行者をはねて死亡させる事故が起きた。しかし、被害者に落ち度があったとされ、加害者が処罰されることも、補償がなされることもなかった。

怒った被害者の両親は、中央党(朝鮮労働党中央委員会)に信訴を行った。

「信訴」とは、中国の「信訪」と同様に、公務員による不正行為を告発するシステムで、憲法69条は「公民は信訴と請願をできる」と定めている。つまり、北朝鮮国民は信訴を行う権利を持つということだ。また、手続きなどは信訴請願法で定められている。

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しかし金正日時代以降、その機能が低下しつつあると指摘されており、うまくやらなければ訴えた相手から逆襲されることすらある。

(参考記事:「訴えた被害者が処罰される」やっぱり北朝鮮はヤバい国

両親に信訴に対し、当局から返事が来ることはなかった。ところが、それから2年経った今年の11月はじめ、郡の保安署から連絡が来た。信訴の手紙が中央党組織指導部の信訴処理科に届いたようで、検閲(監査)が行われたのだ。

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その結果、加害青年は高原郡保安署(警察署)の幹部の息子だったとわかった。事件を担当した保安員(警察官)は、幹部ににらまれまいと、通常の事件処理を行わなかったことが判明した。

また、信訴の手紙は当初、道党(朝鮮労働党咸鏡南道委員会)の担当部署に届いたが、保安署幹部が働きかけてもみ消したというのだ。それが、何らかのきっかけで中央党に届き、検閲が始まったということだ。

幹部は、不正行為が確認され解任された。また、幹部ににらまれまいと事故の処理を行わなかった担当の保安員(警察官)もクビになり、息子は裁判にかけられ、懲役10年の判決を受けた。

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息子はもし2年前に裁判を受けていたのならば、未成年(北朝鮮の成人年齢は17歳)とみなされ、軽い処分で済まされていた可能性があるが、成人になってから裁判を受けたため、特別扱いされず懲役10年になったというのだ。

裁判官は、被告側から受け取ったワイロの額で量刑を決めるが、さすがに中央党の検閲で洗い出された案件について歯向かうことはできず、厳しい判決を下したようだ。しかし、教科所(刑務所)の幹部にワイロを渡せば、刑期を大幅に短縮できたり、強制労働の免除などの特別扱いをしてもらえたりする。

(参考記事:「量刑はワイロで決まる」北朝鮮の常識