人身売買で逮捕されたある検事夫婦の「エグい」手口

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日本では原則として刑事犯罪の捜査権は警察、起訴権は検察にある。このような制度は、世界共通のものではない。韓国では、検察が捜査権と起訴権を握っており、警察は検察から捜査の指示を受ける補助的機関に過ぎない。文在寅政権は、権力集中による弊害を解消するために検察改革を断行しようとしているが、激しい抵抗に遭っていることは周知のとおりだ。

ならば北朝鮮の検察はどうだろうか。北朝鮮の憲法156条は検察を「国家機関、企業所、社会協同団体および公民が国家の法を正確に守っているかを監視する国家機関」と定義している。つまり、捜査よりも監視を使命とする機関なのだ。

母娘をまとめて

保安署(警察署)での予審(捜査終了後起訴までの追加捜査、取り調べ)に問題があれば、再捜査を命じる権限などはあるものの、一般的には保安省(警察庁)、保衛部(秘密警察)の方が社会的地位は高いとされ、検察は影の薄い存在だ。権力を監視し、不正行為を摘発する権限もない。

それでも権力者であることに変わりがないが、検事とその妻が罪を犯し、重罰を課せられた例を見ると、その権力もさほど大きいものではないようだ。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、逮捕されたのは恵山(ヘサン)市検察所の検事とその妻だ。2人の素性について情報筋は詳しく触れていないが、犯行は次のようなものだ。

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道内の三池淵(サムジヨン)では、金正恩党委員長が力を入れる高級リゾート都市の建設プロジェクトが進められている。

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そこには突撃隊と呼ばれる、半強制のタダ働き労働者部隊が多数投入されている。突撃隊所属の若い女性たちは、休暇を過ごすために恵山にやって来た。彼女らを見かけた検事の妻は「中国に行って働かないか」と儲け話を持ちかけた。ところが、それは人身売買のワナだったのだ。

(参考記事:食事抜きで「淫らな行為」強要…北朝鮮女性の人身売買被害

何も知らず、言われるがままに国境を流れる鴨緑江を渡った女性たち。中国側にたどり着くことには成功したものの、中国の国境警備隊に逮捕され、北朝鮮に強制送還されてしまった。

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保衛部(秘密警察)で取り調べを受けた彼女らが、仲介者として検事の妻の名前を出したことで、妻は逮捕された。そして、検事本人も妻の人身売買を幇助した容疑で逮捕された。恵山市内に住む母娘を中国に売り払うなどの人身売買の余罪に加え、脱北、麻薬の密輸の容疑をかけられ、起訴され、妻は懲役20年、検事は懲役13年の判決を受けた。

(参考記事:「中国人の男は一列に並んだ私たちを選んだ」北朝鮮女性、人身売買被害の証言

市民の間では、「力のある人は、力のない人よりやり方がエグい」と、この検事夫婦に対する非難の声が相次いでいる。

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北朝鮮では通常、ヤバいビジネスに手を出す際には、問題が起きたときに守ってくれる権力者をバックに付けて行う。また、運悪く逮捕され、裁判にかけられることになっても、裁判官にワイロを掴ませることで非常に軽い刑で済ますことができる。しかし、詳細は不明だが、今回に関してはそれが功を奏さなかった模様だ。

(参考記事:「量刑はワイロで決まる」北朝鮮の常識

北朝鮮の刑務所は環境が劣悪極まりなく、食料配給もまともに行われない。そんな人権侵害の温床に、人々を送り込み続けてきた検事だが、今度は自分たちが入るはめになるという「ミイラ取りがミイラになる」を地で行く結末となった。

(参考記事:金正日命令で「健康な人も廃人に」北朝鮮刑務所の実態